■【通信大競争 30年攻防の行方】(6)
東京通信ネットワーク(TTNet)の初代社長だった藤森和雄の告別式が3月初旬に行われた。通信市場自由化後30年を目前にした逝去だった。
藤森は、東京電力が1986年に設立したTTNetに副社長から転じた。豪放磊落(らいらく)な性格で、「NTT対抗の本命は電力系だ。他の新電電はつぶす気で攻める」といった刺激的な発言が先行し、第二電電(DDI)や日本テレコムの経営陣の神経を逆なでした。
DDIや日本テレコムがゼロから通信網を構築したのに対し、電力系の地域通信子会社は電力業務用光ファイバーを活用できる優位性があった。当時のNTT幹部も「怖いのは電力系」と認めていただけに、藤森の言動は注目された。
藤森は電力系通信事業者を統合し、NTTに対抗する全国ネットワークを構築する考えを持っていたが、道半ばで経営から退いた。その後、2001年には電力会社の共同出資で法人向け通信サービス中心のパワードコムが発足したが、本格的な一本化は実現せず、06年にはKDDIに買収された。藤森が描いた「NTT対抗軸」は幻に終わった。
DDI、KDD、日本移動通信の3社が合併して00年に発足したKDDIは、次のステップとして電力系情報通信事業者との提携を目指した。電力系の光ファイバー網でNTTに対抗するのが最大の狙いで、パワードコム買収はその第1弾だった。