【ビジネスアイコラム】
「世界最高水準の情報通信基盤の実現」に向けた議論が総務省の情報通信議会特別部会で始まった。NTTに対する規制緩和が話題になっているが、最大の焦点は1985年の通信自由化以来、30年間継続してきた競争政策の枠組みを抜本的に見直し、市場の変化を見据えた新たな競争促進の道筋をつけることだ。急速に進化する技術の裏で浮き彫りになってきたネット社会の危険回避策も重要課題だ。
わが国の通信市場開放は、米国や英国と違い、民営化したNTTの資本分離を行わず、行政がNTTに設備を開放させて競争を促してきた。その結果、数多くの新規通信事業者(NCC)が登場し、多様なサービスが生まれたが、その後10社以上が淘汰(とうた)された。最近では第4の携帯電話事業者イー・アクセスが資金難からソフトバンクの傘下に入り、携帯電話市場は3社寡占に逆戻りした。
新規参入によって市場競争が進展すれば事業者が集約され、再び寡占化が進むのは、米国の携帯電話市場をみても明らかだが、競争政策のジレンマでもある。