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キラキラ、ノリノリ イタリア風バッハ ピアニスト アンドレア・バッケッティさんインタビュー

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キラキラ、ノリノリ イタリア風バッハ ピアニスト アンドレア・バッケッティさんインタビュー

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イタリアのピアニスト、アンドレア・バッケッティさん=2014年7月9日(江原和雄撮影)  “イタリアの個性派ピアニスト”としてイタリア・ソニーからすでに7枚のアルバムをリリースしているアンドレア・バッケッティ。このほど、日本の独自企画による「イタリア協奏曲~バッケッティ・プレイズ・バッハ」(ソニー)を出した。

 まず目を引くのが、はだしで写っているジャケット写真。これも個性派の自己主張かと尋ねると、「カメラマンに靴を脱いでみる?といわれたから脱いだだけです。若いときは反抗心が強い青年でしたが、今はおとなしくなりました」と笑う。

 こんな答えをするのには理由がある。子供のころは天才少年と騒がれた。

 「ジェノバに近い村で育ちました。小学校1年のクリスマスで、先生が弾くキーボードの和音が間違っており、それを指摘しました。音楽とは無縁の普通の家庭で、家にはプレゼントでもらったリコーダーがあるだけ。絶対音感があることを人に言われたのです。もしかしたら才能があるかもしれない、とピアノを習わせてもらいました」

 コンクールの実績なし

 しかし、ショパン・コンクールなど大きな国際コンクールでの実績はない。たとえば、浜松国際ピアノコンクールの予備予選を受けたが、落ち、浜松にさえ行けなかった。

 「天才少年と騒がれ、いろいろな場所で演奏しました。可能性が与えられたと錯覚していました。しかし、人が思うほど才能がないのではないか、という恐怖心をずっと持っていました。国際コンクールでは一度も1位を取っていません。若いときは、コンクールに通った人の演奏を、ここはいいけどここはだめ、などと批判していましたが、今ではそれだけの才能があると思うようになりました。私はただ向上心を持って練習を重ねました」

 奔放と謙虚、知性

 今回リリースされたCDもそうだが、録音はバッハを中心に行っている。「ゴルトベルク変奏曲」の録音は映像も含めて他のレーベルに3種類あり、ソニーからは「フランス組曲」全曲もリリースしている。今回のアルバムは、ファツィオリのピアノで録音したことも特徴のひとつ。

 「バッハのポリフォニーの完成度の高さは素晴らしい。作曲家の指示が少ないので演奏者が自由に解釈できます。練習して弾けば弾くほど好きになります。ゴルトベルクを3度録音しているのは、おのずと考え方やアイデアが変わってくるので実験をしたいのです。ファツィオリはバロックには合うと思います。ちなみにデッカへのベリオ作品集の録音はヤマハでしました。バッハをピアノで録音するのは、現代のピアノだからできることを最大限に生かすためです」

 小さな体から機関銃のようにぽんぽんと言葉が飛び出す。しかし、発言の奥には謙虚さと知性がある。東京のトッパンホールで行われたリサイタルでも、ノリのよいリズム、そしてイタリアを思わせる明るい音色が特徴的だった。(月刊音楽情報誌「モーストリー・クラシック」編集長 江原和雄、写真も/SANKEI EXPRESS

 ■Andrea Bacchetti 1977年、イタリア、リビエラ海岸、レッコに生まれる。ザルツブルクのモーツァルテウム音楽院、パリ国立高等音楽院、ジェノバのニコロ・パガニーニ音楽院で学ぶ。11歳でシモーネ指揮イ・ソリスティ・ヴェネティと共演しデビュー。96年、プレミオ・ベネチア・コンクールで優勝。作曲家ルチアーノ・ベリオと緊密な関係を持ち、ベリオ監修で録音も行った。2012年、指揮者ファビオ・ルイジの強い推薦でパシフィック・ミュージック・フェスティバルに来日。

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