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試行錯誤重ねオリジナリティー生む 仏リヨン管と7月に初共演 バイオリニスト 五嶋龍さんインタビュー
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世界を股に掛けて活躍する人気バイオリニスト、五嶋龍。7月に来日するフランス国立リヨン管弦楽団と共演し、ラロの「スペイン交響曲」を披露する。超有名曲だが、日本では初めて演奏する。
「ラロは非常に楽しみです。あまりに有名な曲なので控えていました。たとえばブルッフのバイオリン協奏曲第1番を弾いた回数も少ないです。メンデルスゾーンのコンチェルトも一昨年、演奏会で初めて弾きました。こうした有名な曲は学生が弾くコンチェルトというイメージが定着しているところがあります。そういうふうに見られたくなかったのです。もちろん主催者からは弾いてください、と求められます。『ラロもいいですけど、この曲はどうですか』と別な曲を提案していました(笑)」
「スペイン交響曲」と名付けられているものの、パブロ・デ・サラサーテのために作曲されたバイオリン独奏とオーケストラのための作品で、1875年に初演された。スペイン風の主題が使われ、民族色豊かな曲だ。
指揮者のレナード・スラットキン、リヨン管と共演するのも初めて。
「フランスのオーケストラと共演するのは10年ぶりぐらいです。スペイン風の曲で、指揮者はアメリカ人、ソリストは日本人。インターナショナルです。いろんな要素があってハイブリッドな感じがいい」
世界各国のオーケストラはそれぞれお国柄があるという。「ドイツのオーケストラはプライドを持っており、フランスはスタンダードが高い。アメリカのオーケストラも自信を持って弾きます。国の力があり、それを信じているからです。音楽にもそういう態度が出ます。私は今、ニューヨークに住んでいますが、ホームベースはアメリカではなく、やはり日本。帰ってきたという気がします」
ただ演奏と日本人であることとは関係ない、自分は日本人的な演奏とは思わない、と話す。過去の巨匠たちの録音を聴き、ロックさえも自分の音楽の肥やしにする。CDに収録したプロコフィエフのバイオリン・ソナタ第1番の3楽章でテーマが戻ってくる部分は、古いレコードをかける蓄音機のざらざらした音をイメージし、バイオリンとピアノの音とのギャップ、コントラストを作ることを目指した。
「クラシックは博物館に行ってカタログを作ることではありません。現代に通じる生き生きとしたものでないといけない。だからいろんなところからアイデアをもらいます。弓を変え、弓の持ち方を変え、ガット弦を使ってみたり、弾き方を変えたり、いろいろ試します。あえて変な指使いをすることもあります。
クライスラーやハイフェッツのグリッサンドのやり方は今はしませんが、いいものでも失われていってしまったものがあります。なぜ、ロックのエレキギターや南米の音楽などが心に響くのか考えます。こうして自分のオリジナリティーを作っていくのです」(月刊誌「モーストリー・クラシック」編集長 江原和雄/SANKEI EXPRESS)
7月10日(木) 川口リリアホール。7月16日(水) 横浜みなとみらいホール。7月17日(木) サントリーホール、他。問い合わせは、KAJIMOTO(電)03・3574・0550