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弦楽四重奏でプログレ 「時代超えた強さ」 モルゴーア・クァルテット アルバム第2弾
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プログレ・アルバム第2弾をリリースしたモルゴーア・クァルテット(提供写真) 2年前に発売したプログレッシブロック作品を弦楽四重奏で演奏した「21世紀の精神正常者たち」が大好評だったモルゴーア・クァルテット。このほど、第2弾の「原子心母の危機」(コロムビア)が発売された。
プログレッシブロック(プログレ)は1960年代後半、イギリスで生まれた。クラシックやジャズなどさまざまな要素を取り込んだプログレッシブ(先進的)なロック。
大のプログレ・ファンでアルバムの選曲を行った第1バイオリンの荒井英治は「小学校高学年から70年代は一番ロックのLPを買っていました。クラシックより面白かった(笑)。プログレはクラシックや民族音楽などいろいろな要素が入っており、変化に富んでいます。今でもファンが多い。一時の流行ではなく、時代を超えてくぐり抜けてきた音楽の強さを持っているからこそ、エレキギターを使わなくても弦楽四重奏で曲として成り立つのです」と話す。
タイトルの「原子心母」はピンク・フロイドの曲。ほかにキング・クリムゾンの「レッド」、イエスの「危機」などを収録。さらに、キース・エマーソンが東日本大震災にショックを受け書き上げたピアノ曲を、キース本人からの提案で弦楽四重奏に編曲した「ザ・ランド・オブ・ライジング・サン」が入っている。編曲はすべて荒井が行っている。
「携帯CDプレーヤーのイヤホンの上に電子ピアノのヘッドホンをかぶせ、譜面におこしています。ロックはドラムが重要ですが、ドラムをコピーするわけにはいきません。リズムのエッセンスを抽出するのが大変です。雰囲気をいかに取り出すかです。原曲を超えようとは思いません」
モルゴーア・クァルテットはショスタコービッチの弦楽四重奏曲全15曲を演奏するために1992年に結成された。4人はオーケストラの重要なポジションを持っている。荒井は東京フィル・ソロ・コンサートマスター、第2バイオリンは戸澤哲夫(東京シティ・フィル・コンサートマスター)、ビオラは小野富士(NHK交響楽団次席奏者)、チェロは藤森亮一(N響首席奏者)。現代音楽を中心に演奏活動を続けてきたが、プログレに反対はなかったという。
「うちのカルテットは分業制でプログラムは私一人にまかされています。キング・クリムゾンもイエスもほかのメンバーにとっては知らない曲の1つ。私たちはこの曲をどう思うかなどと意見交換はしないのですが、何回も演奏しているうちに面白いと思ってくれているのではないでしょうか」
モルゴーアは定期演奏会で同じ曲を演奏しないことをモットーにしてきた。しかし、このプログレッシブロックに関しては例外。
「クラシック・ファンがロックということに捉らわれず、半世紀近く前に生まれた音楽の、一つの弦楽四重奏曲の作品として聴いてくれたらうれしいです」と荒井は話した。(月刊音楽情報誌「モーストリー・クラシック」編集長 江原和雄/SANKEI EXPRESS)
6月23日(月)19:00 ザ・フェニックスホール(大阪)。問い合わせ:ヴォイシング(電)06・6451・6263。6月25日(水)18:30 福島市音楽堂大ホール。問い合わせ:福島民友新聞(電)024・523・1334。6月26日(木)14:00、19:00 浜離宮朝日ホール(第40回定期演奏会、東京)。問い合わせ:ミリオンコンサート協会 (電)03・3501・5638