SankeiBiz for mobile

ローカルから発信する新しい東欧サウンド ファンファーレ・チォカリーア、ボリス・コヴァッチ

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSのエンタメ

ローカルから発信する新しい東欧サウンド ファンファーレ・チォカリーア、ボリス・コヴァッチ

更新

ルーマニアのモルドバ地方で結成された大所帯ブラスバンド、ファンファーレ・チョカリーア(提供写真)  日本ではあまりなじみがないかもしれないが、東ヨーロッパのバルカン半島周辺は民謡の宝庫といわれている。例えば、バルトークやコダーイといったクラシックの作曲家たちは、トランシルバニア地方(現ルーマニア)のメロディーを採譜したことで知られているし、ブルガリアンボイスと呼ばれる合唱はCMや映画などでもひんぱんに使用されている。最近では、ロマやマヌーシュとも呼ばれるジプシー音楽が、ワールドミュージックファンに人気が高い。こういったいわゆる民族音楽を、モダンなポップミュージックへと転換するアーティストはますます増えている。

 世界最速のブラバン

 なかでも人気のグループが、ファンファーレ・チォカリーアだ。彼らはルーマニア北西部の村ゼチェ・プラジニで結成されたいわゆるブラスバンド。もともと地元の結婚式などで演奏するお祭りバンドだったのだが、ドイツのプロデューサーに“発見”され、1998年にアルバム「ラジオ・パシュカニ」でデビュー。これが欧米で大受けし、ドキュメンタリー映画「炎のジプシーブラス ~地図にない村から」の公開でさらに火がついた。

 彼らの特徴は、とにかくせわしなく吹きまくる管楽器の音色とパワフルなリズム。“世界最速のブラスバンド”との触れ込みで何度も来日公演を行うほどの人気だ。最新作「悪魔の物語」では、マヌーシュ・スイングと呼ばれるジプシー風のギターを弾くカナダ人、エイドリアン・ラッソと共演。これまでとは違った独特のグルーブを生み出すことに成功している。

 どこか懐かしい旋律

 もうひとり注目しておきたいのは、セルビア出身のマルチ・ミュージシャンであるボリス・コヴァッチ。1970年代から活動するベテランで、実験的なジャズからジプシー音楽までさまざまなスタイルで表現し続けている。

 届いたばかりのアルバム「イースタン・ムーン・ライジング」は、彼が率いるラ・カンパネッラというグループ名義。ボリスのサックスの他、アコーディオン、ドラム、ベース、ギターという5人のアンサンブルで、どこか懐かしく感じさせる哀愁味にあふれたメロディーを奏でていく。退廃的で映像的な感覚は、他の欧米のミュージシャンには出せない味わいがあり、まさに東欧ならではのサウンドといえる。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS

 ■Fanfare Ciocarlia ルーマニアのモルドバ地方で結成された大所帯ブラスバンド。1998年にアルバム「ラジオ・パシュカニ」でデビューし、破天荒な合奏でブレークした。最新作はカナダ人ギタリスト、エイドリアン・ラッソと共演した「悪魔の物語」。

 ■Boris Kovac 1955年、セルビア生まれのマルチミュージシャン。幼い頃からサックスやアコーディオンなどさまざまな楽器に親しみ、70年代半ばからジャズと東欧音楽を融合した音楽を模索。ソロやラ・カンパネッラ名義、映画音楽など多岐に渡って活動中。

 ■くりもと・ひとし 音楽&旅ライター、選曲家、ビルボードライブ企画プランナー。2年間の中南米放浪の経験を生かし、多彩なジャンルで活動中。情報サイト、All Aboutでアルゼンチンのガイドを担当。最新著書は「アルゼンチン音楽手帖」。

ランキング