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女性ジャズボーカルの未来担う新感覚 グレッチェン・パーラト、ザラ・マクファーレン

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女性ジャズボーカルの未来担う新感覚 グレッチェン・パーラト、ザラ・マクファーレン

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 ここ数年でジャズシーンが大きく変化している。いわゆる若手のジャズミュージシャンが、狭いジャズの世界だけでなくジャンルも超えて興味深い音楽を作り始めているのだ。なかでもシンガーの充実ぶりは特筆に値する。男性では、老舗のブルーノート・レーベルとの契約で話題を呼んだホセ・ジェイムズやグレゴリー・ポーターといったヒップホップ世代たちの躍進が目覚ましい。一方の女性歌手はというと、グラミー賞を受賞して一躍スターとなったエスペランサ・スポルディングが頭ひとつ飛び抜けているが、次の座を狙うシンガーも多数控えており、これからますます面白くなっていきそうだ。

 楽器のようにあやつる

 そんな新感覚の女性シンガーの筆頭に挙げたいのが、グレッチェン・パーラト。一昨年に発表したアルバム「ロスト・アンド・ファウンド」は、ニューヨークのジャズシーンのトップを走るピアニスト、ロバート・グラスパーがプロデュースを手がけ、ジャズボーカルの未来を占う傑作として日本でも高く評価された。

 最新作はそんな彼女の勢いの秘密が伝わるライブレコーディング。ベースのアラン・ハンプトンやドラムのケンドリック・スコットといった若きつわものが脇を固め、シルキーな歌声をまるで楽器のように自由にあやつっていく。ハービー・ハンコックからシンプリー・レッド、ローリン・ヒルといったカバー選曲のセンスのよさにもうなってしまう一作だ。

 新しい扉を開ける

 活性化しているのはニューヨークだけではない。ロンドンから登場したザラ・マクファーレンも最先鋭のジャズシンガーといえるだろう。日本でもおなじみのDJ、ジャイルス・ピーターソンが大絶賛する彼女は、ジャズというよりもスピリチュアルなソウルシンガーというたたずまいではあるが、実際ジャズ・ジャマイカやニコラ・コンテといったジャズとクラブミュージックの境界線上で活躍するアーティストとの共演も多い。

 新作「イフ・ユー・ニュー・ハー」では、闇の中から聞こえてくるようなブルージーなナンバーから、少しスモーキーながらかわいらしいスキャットまで披露する。けっして派手ではないが、ジャズの新しい扉を開けようとする強い意志が感じられる力作だ。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS

 ■Gretchen Parlato ニューヨークを拠点に活動するジャズシンガー。2011年にロバート・グラスパーがプロデュースした「ロスト・アンド・ファウンド」がヒット。最新作のライブ盤「ライヴ・イン・ニューヨーク・シティ」でもその実力ぶりを堪能できる。

 ■Zara Mcfarlane ロンドン出身のジャズシンガー。ジャズ・ジャマイカをはじめさまざまなセッションに参加した後、2010年にデビュー。ジャイルス・ピーターソンに見初められ、彼のレーベルからのアルバム「イフ・ユー・ニュー・ハー」が発表されたばかり。

 ■くりもと・ひとし 音楽&旅ライター、選曲家、ビルボードライブ企画プランナー。2年間の中南米放浪の経験を生かし、多彩なジャンルで活動中。情報サイト、All Aboutでアルゼンチンのガイドを担当。最新著書は「アルゼンチン音楽手帖」。

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