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クラシックギターでつま弾くポップワールド 青葉市子、伊藤ゴロー
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シンガー・ソングライター、青葉市子(提供写真) ピアノと並んでメジャーな楽器といえばギター。でも、ギターと一言でいっても、そのスタイルはさまざまだ。一般的にロックミュージシャンが弾くのはエレクトリックギターだが、その中にも数え切れない程の種類があるし、アコースティックギターにもスチール弦を張ったフォークギターとフラメンコ仕様のギターではまた違う。そういった多種多様なギターのなかでも、基本となるのがいわゆるクラシックギターだ。文字通り、クラシックの演奏家が主に使用しているが、ボサノバやジャズなど一部のジャンルでも使われてきた。しかし最近は、ポップフィールドで活躍するアーティストのなかでもクラシックギター・ファンが増えている。
そのひとりが、シンガー・ソングライターの青葉市子だ。彼女は2010年に19歳の若さでアルバムデビューし、いま最も勢いに乗っているアーティストといってもいいだろう。
メジャーデビュー作となった最新アルバム「0」もポツポツとつぶやくような言葉をシンプルなメロディーに淡々と乗せていくだけなのに、非常にドラマを感じさせる深みのある世界を構築している。組曲風に展開する大作やトンネルの中で録音したという曲もユニークだが、そういった一見奇抜と思われる楽曲も、確かなクラシックギターのテクニックがあるからこそ、凛とした雰囲気を損なわずに成立しているのだろう。
もうひとりのクラシックギター・マスターは伊藤ゴロー。元々はナオミ&ゴローというボサノバユニットで登場したが、ジャズやポップスなど多才なジャンルで活躍。クラシカルなものやエレクトロニカもこなし、原田知世のプロデュースや映画のサントラまで数え切れないほどの仕事を残している。
今回発表したソロ作品「POSTLUDIUM」はそんな彼の繊細な一面を切り取った一作。SOIL&“PIMP”SESSIONSのメンバーやストリングスなどを迎えたアンサンブルの上に、水彩画を描くように丁寧にギターをつま弾いていくインスト曲は、ジャズやクラシックなどのエッセンスを取り込んだオリジナリティーに満ちている。そしてクラシックギターならではの静謐で温かい印象が、心地良く後に残るのだ。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)