日本ではあまりなじみがないかもしれないが、東ヨーロッパのバルカン半島周辺は民謡の宝庫といわれている。例えば、バルトークやコダーイといったクラシックの作曲家たちは、トランシルバニア地方(現ルーマニア)のメロディーを採譜したことで知られているし、ブルガリアンボイスと呼ばれる合唱はCMや映画などでもひんぱんに使用されている。最近では、ロマやマヌーシュとも呼ばれるジプシー音楽が、ワールドミュージックファンに人気が高い。こういったいわゆる民族音楽を、モダンなポップミュージックへと転換するアーティストはますます増えている。
世界最速のブラバン
なかでも人気のグループが、ファンファーレ・チォカリーアだ。彼らはルーマニア北西部の村ゼチェ・プラジニで結成されたいわゆるブラスバンド。もともと地元の結婚式などで演奏するお祭りバンドだったのだが、ドイツのプロデューサーに“発見”され、1998年にアルバム「ラジオ・パシュカニ」でデビュー。これが欧米で大受けし、ドキュメンタリー映画「炎のジプシーブラス ~地図にない村から」の公開でさらに火がついた。