ここ数年でジャズシーンが大きく変化している。いわゆる若手のジャズミュージシャンが、狭いジャズの世界だけでなくジャンルも超えて興味深い音楽を作り始めているのだ。なかでもシンガーの充実ぶりは特筆に値する。男性では、老舗のブルーノート・レーベルとの契約で話題を呼んだホセ・ジェイムズやグレゴリー・ポーターといったヒップホップ世代たちの躍進が目覚ましい。一方の女性歌手はというと、グラミー賞を受賞して一躍スターとなったエスペランサ・スポルディングが頭ひとつ飛び抜けているが、次の座を狙うシンガーも多数控えており、これからますます面白くなっていきそうだ。
楽器のようにあやつる
そんな新感覚の女性シンガーの筆頭に挙げたいのが、グレッチェン・パーラト。一昨年に発表したアルバム「ロスト・アンド・ファウンド」は、ニューヨークのジャズシーンのトップを走るピアニスト、ロバート・グラスパーがプロデュースを手がけ、ジャズボーカルの未来を占う傑作として日本でも高く評価された。