一般的に民族音楽と呼ばれる世界中のローカルミュージックには、お祭り音楽がたくさん存在する。そもそも音楽というのは、特別な儀式や闘いを鼓舞するために利用されたものが多かったから、祭りで使われること自体が当然。ブラジルのサンバや日本の盆踊りなんかはその代表だ。しかし、最近はそういった民族的な祝祭性を抽出し現代の音楽と組み合わせることで、新しいお祭り音楽を生み出すミュージシャンが急増中。これらはグローバルとローカルを組み合わせて「グローカル」なんて呼ばれることも多い。
異国情緒と新しい感覚
オマール・スレイマンは、そんなグローカル音楽シーンで突出したアーティストの一人で、中東シリアの伝統音楽タブケをエレクトリック化することでトップスターとなった。タブケは、おもに結婚式などで演奏されるジャンルであり、実際に彼もおめでたい場での演奏活動を主軸としていたが、独自に新しいエッセンスを加えたサウンドを生み出しているうちに、ビョークやトム・ヨーク(レディオヘッド)らが大絶賛。ついにアルバム「ウェヌ・ウェヌ」で本格的な世界デビューを果たした。彼のサウンドの特徴は、4つ打ちのアッパーなビートにヘビ使いの笛のような音色がブリブリとはい回り、アラブ特有のメロディーラインが歌われること。猛烈に異国情緒を感じるが、新しい感覚に満ちている。