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アフリカの聖地マリ 充実音楽シーン ティナリウェン、ママニ・ケイタ

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アフリカの聖地マリ 充実音楽シーン ティナリウェン、ママニ・ケイタ

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マリ出身の「砂漠のブルース」バンド(提供写真)  アフリカ大陸の北西部に位置するマリ共和国。この国に対して明確なイメージを持っている人はそんなに多くはないかもしれない。トンブクトゥという世界遺産都市のことはそれなりに有名だが、最近は政情が不安定のため時折ニュースで名前を聞くことがある程度。しかし、音楽ファンにとっては昔から聖地のひとつだ。サリフ・ケイタやアリ・ファルカ・トゥーレといった世界的な音楽家が多数世に出ているが、とくにここ数年の充実ぶりは特筆すべきだろう。今回はマリから届いた新作を紹介したい。

 ブルースでエキゾチック

 まずは、「砂漠のブルース」との異名を持つティナリウェン。サハラの遊牧民であるトゥアレグ族によるバンドで、1970年代から活動を開始。2000年代以降は世界中のフェスに出演することで大きな話題となり、11年発表のアルバム「タッシリ」ではグラミー賞を受賞した。トム・ヨークからハービー・ハンコックまで、ファンを公言するミュージシャンも後を絶たない。そんな彼らの新作「エンマー~灼熱の風~」も期待にたがわない仕上がり。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョシュ・クリングホッファーらをゲストに迎え、ブルージーなギターの音色とアラブとアフリカのサウンドを見事に融合。手拍子やコーラスを効果的に使ったエキゾチックなナンバーは、淡々としながらも気が付けば高揚させられているという不思議な音楽だ。

 プリミティブな歌声

 もうひとりの注目株は、女性シンガー・ソングライターであるママニ・ケイタ。1980年代からサリフ・ケイタのバック・コーラスを務めながら世界中を回り、その後パリへ移住。2002年にはギタリストのマルク・ミネリとの連名で、ジャズやクラブサウンドを取り入れたアルバム「エレクトリック・バマコ」を発表して話題を呼んだ。最新作「カヌ」ではバンジョーの祖先ともいわれている民族楽器ンゴーニを取り入れ、トラディショナルなサウンドにアプローチしつつもエレキギターなどを加えてコンテンポラリーなアフロポップを作り上げている。そしてなによりも彼女の躍動するプリミティブな歌声に魅了される傑作だ。マリという国の豊潤な音楽シーンを体感できるアルバムといってもいいだろう。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS (動画))

 ■Tinariwen マリ出身の「砂漠のブルース」バンド。1979年に結成し、2001年のアルバム「ザ・レイディオ・ティスダス・セッションズ」でワールドデビュー。世界中でライブ活動を行ううちに評価を高め、11年には「タッシリ」でグラミー賞を受賞した。

 ■Mamani Keita 1965年マリ生まれのシンガー・ソングライター。同郷のサリフ・ケイタのバックコーラスなどを経てパリに移住。2002年にアルバム「エレクトリック・バマコ」でデビュー。新作「カヌ」では民族楽器ンゴーニを使いながら現代的なサウンドを構築。

 ■くりもと・ひとし 音楽&旅ライター、選曲家、ビルボードライブ企画プランナー。2年間の中南米放浪の経験を生かし、多彩なジャンルで活動中。情報サイト、All Aboutでアルゼンチンのガイドを担当。最新著書は「アルゼンチン音楽手帖」。

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