アフリカ大陸の北西部に位置するマリ共和国。この国に対して明確なイメージを持っている人はそんなに多くはないかもしれない。トンブクトゥという世界遺産都市のことはそれなりに有名だが、最近は政情が不安定のため時折ニュースで名前を聞くことがある程度。しかし、音楽ファンにとっては昔から聖地のひとつだ。サリフ・ケイタやアリ・ファルカ・トゥーレといった世界的な音楽家が多数世に出ているが、とくにここ数年の充実ぶりは特筆すべきだろう。今回はマリから届いた新作を紹介したい。
ブルースでエキゾチック
まずは、「砂漠のブルース」との異名を持つティナリウェン。サハラの遊牧民であるトゥアレグ族によるバンドで、1970年代から活動を開始。2000年代以降は世界中のフェスに出演することで大きな話題となり、11年発表のアルバム「タッシリ」ではグラミー賞を受賞した。トム・ヨークからハービー・ハンコックまで、ファンを公言するミュージシャンも後を絶たない。そんな彼らの新作「エンマー~灼熱の風~」も期待にたがわない仕上がり。レッド・ホット・チリ・ペッパーズのジョシュ・クリングホッファーらをゲストに迎え、ブルージーなギターの音色とアラブとアフリカのサウンドを見事に融合。手拍子やコーラスを効果的に使ったエキゾチックなナンバーは、淡々としながらも気が付けば高揚させられているという不思議な音楽だ。