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ある種の進化した現代音楽はトレンド ハウシュカ、竹村延和
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アーティスト、ハウシュカ(提供写真) 現代音楽(=コンテンポラリーミュージック)。そう聞いただけで、なんだか難解で退屈な音楽を思い浮かべる方もいるかもしれない。たしかに、メロディーラインがまったくないに等しい12音階の無調音楽やほとんどノイズにしか聞こえない電子音楽など、「何が楽しいの?」と感じてしまうものも少なくない。しかし、この100年ほどの間に育まれてきた前衛音楽は、実はポップミュージックにも大きな影響を与えている。プログレッシブロックやテクノなどはまさに現代音楽の申し子といってもいいだろう。そして、さらに進化したある種の現代音楽は、ジャンルを超えたトレンドとして認められているものもある。
その代表格のひとつがクラシックの伝統を重んじつつ新しい世界を生み出しているハウシュカ。ドイツ人ピアニストのフォルカー・ベルテルマンによるソロプロジェクトだ。彼の特色はなんといってもプリペアドピアノ。これは、ピアノの弦の部分に金属やゴムなどを挟み込み、本来とは違う音色を出す奏法。現代音楽の大家であるジョン・ケージが編み出した手法をハウシュカは取り入れ、とてもリリカルでメランコリックな作品を作り続けている。
新作「アバンダンド・シティ」は、原発事故で人が消えた街や陥没によって消えた村など実在する廃虚をテーマにしており、社会的なメッセージを織り込んでいるのも興味深い。とにかく、ピアノという楽器の可能性を感じさせてくれるサウンドだ。
一方の竹村延和も、現代音楽に影響を受けたユニークなアーティストの一人。1990年代にはクラブミュージックで注目を集めた後、ソロ作品では一転して子供の無垢な世界を表現し高い評価を得た。現在はドイツで活動を行っている。12年ぶりのオリジナル作品として話題を集めているアルバム「ツァイトラウム」も彼にしか生み出せない独創的なもの。ピアノや管弦楽器、エレクトロニクスなどさまざまな音の断片が細切れに組み合わさり、日本語とドイツ語の朗読が挿入されていく。ミュージック・コンクレートといわれるコラージュ音楽に通じるが、万華鏡をのぞいているかのようなカラフルな世界は、実験的ながら敷居を高く感じさせない親しみやすさがある。(音楽&旅ライター 栗本斉(ひとし)/SANKEI EXPRESS)