現代音楽(=コンテンポラリーミュージック)。そう聞いただけで、なんだか難解で退屈な音楽を思い浮かべる方もいるかもしれない。たしかに、メロディーラインがまったくないに等しい12音階の無調音楽やほとんどノイズにしか聞こえない電子音楽など、「何が楽しいの?」と感じてしまうものも少なくない。しかし、この100年ほどの間に育まれてきた前衛音楽は、実はポップミュージックにも大きな影響を与えている。プログレッシブロックやテクノなどはまさに現代音楽の申し子といってもいいだろう。そして、さらに進化したある種の現代音楽は、ジャンルを超えたトレンドとして認められているものもある。
ピアノの可能性
その代表格のひとつがクラシックの伝統を重んじつつ新しい世界を生み出しているハウシュカ。ドイツ人ピアニストのフォルカー・ベルテルマンによるソロプロジェクトだ。彼の特色はなんといってもプリペアドピアノ。これは、ピアノの弦の部分に金属やゴムなどを挟み込み、本来とは違う音色を出す奏法。現代音楽の大家であるジョン・ケージが編み出した手法をハウシュカは取り入れ、とてもリリカルでメランコリックな作品を作り続けている。