大きな壁を動かすかもしれない草の根ではなく、自分の周囲しか見ない草の根なのだ。それでも周囲の移民を排除しないだけマシというべきなのだろうか。
とにかく言えることは一つ。
周囲の人間が温かい言葉を言ってくれるから安心、と喜んでいられない状況を前にしても、この周囲の温かい言葉を頼りに人は生きるしかないのだ。
今はあまりに状況が混沌としているために見切れないことが多い。人との信頼関係も壊れやすい。が、状況の何が本当で、何が本当ではないかの判断は、人の言葉を信頼してこそ可能だ。
あることがらを1から100まで全て見ている人などいない。どこかに必ず穴ができる。それを想像力や推測で補うか、そこを見ている人の言葉を信じるか、どちらかしかない。
草の根の交流とは、この穴を埋めていく存在でもあるのだ。とても心細いことがあるし、裏切られることもある。
が、ここにしか立つべき場はない。(安西洋之)
【プロフィル】安西洋之(あんざい ひろゆき)
上智大学文学部仏文科卒業。日本の自動車メーカーに勤務後、独立。ミラノ在住。ビジネスプランナーとしてデザインから文化論まで全方位で活動。現在、ローカリゼーションマップのビジネス化を図っている。著書に『世界の伸びる中小・ベンチャー企業は何を考えているのか?』『ヨーロッパの目 日本の目 文化のリアリティを読み解く』 共著に『「マルちゃん」はなぜメキシコの国民食になったのか? 世界で売れる商品の異文化対応力』。ローカリゼーションマップのサイト(β版)とフェイスブックのページ ブログ「さまざまなデザイン」 Twitterは@anzaih
ローカリゼーションマップとは?
異文化市場を短期間で理解するためのアプローチ。ビジネス企画を前進させるための異文化の分かり方だが、異文化の対象は海外市場に限らず国内市場も含まれる。