仕事全体に「魂」を込める 職人技と機械生産を繋ぐイタリア流の極意 (2/3ページ)

 普通、魂という表現を使わないが、仮に使うとするならば、あるモノ一つではなく、やっている仕事の全体に魂を込める。やや大局的な位置に立つ。

 すると、次のような展開のロジックになる。

一つのモノは完璧に仕上げようとする。しかし、同じモノを100個作るのであれば、一つ一つを同じように完璧にできないのは当然である、と考える。手仕事には限界があるから、職人の仕事と機械生産のミックスとの解決策に向かう。それがイタリアは職人技を量産品に取り入れるのが上手い、と評価を受ける背景になる。

 職人仕事が機械生産と断絶なく繋がりやすいのは、職人技への見切りがはっきりしているからこそ、である。このように職人の仕事をとっても全体と部分の捉え方が、日本とイタリアで異なる。

 実は、今年に入って、あるイタリア人に言われた言葉が耳に残っている。

 「日本のクルマはあんなにも品質が良くて丁寧に作っているのに、どうして最高に美しいクルマを作れないのか? 細部のデザインと細かい作業を全体のカタチに仕上げるプロセスで何か致命的な問題があるのではないか」

 かつて評論家の加藤周一は、日本と西洋文化の違いを次のような事例で説明した。

 江戸の大名屋敷は部屋の継ぎ足しでできた格好をしている。最初に全体のイメージ図を描いたとは思えない。他方、欧州の城は最初に外観を決めてから部屋割りを考えている。

文化のギャップは乗り越えられる

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