目標作りを急いだのは、全面自由化を控えて、CO2排出量は多いもののコストを抑えられる石炭火力の新増設が相次ぎ、政府が電力業界に対し早期に目標を策定するよう求めたからだ。
ただ、今回の目標は業界全体の大枠にすぎず、実効性を高める個別目標は盛り込まれていない。原発を持たず、石炭火力で価格競争に勝ち抜きたい新電力が、手足を縛られかねない個別目標に反発したためだ。新電力として市場参入するガス大手の幹部も「まず、低コストの原発を持つ電力大手が石炭火力を減らすべきだ」と吐き捨てる。
目標達成に向け、電事連は各社の取り組みのチェックを続けるが、罰則などの強制力はない。枠組みに参加しない新規業者をどう取り込み「フリーライダー(ただ乗り)」をなくすかも課題となる。電力業界が真の「一枚岩」で温暖化対策にのぞむまでには、乗り越えるべき「壁」がまだまだ多そうだ。