「頻繁に入ります。CPOに行くと、艦内の最新の雰囲気や乗組員の情報が、たちどころに分かる。上級下士官との風通しは極めて重要です」
想像を絶する母娘関係
「日焼け止めを塗っています」と、ちゃめっ気たっぷりに“機密”も明かしてくれたが、艦艇は8隻目、海上勤務は通算11年近い。「潮け」タップリの「船乗り」で「海上・艦内生活にはまったく困らない」。
しかし、大谷さんは海自幹部以外に母と妻、二つの顔が有る。こちらは「海上・艦内生活」のようにはいかなかった。冒頭で記したが、母と娘の関係は一般家庭の想像をはるかに超える。
30歳で結婚し、32歳で(一人)娘を出産する。
「どうしようかと思った。けれども、艦長への夢を諦められなかった」
艦長を目指し、訓練・座学に明け暮れる毎日。娘を大阪府内の実家に預け、年に3~4回、1~2日帰省して顔を見た。おばあちゃん子、おじいちゃん子の悪い方の面が出るのではと心配する大谷さんに、母親は「肝心なときには、やっぱりママ、ママなのよ」となぐさめたが「悲しかった」。
「こんなに背が高かった? 毎日一緒にいられぬ境遇とは、こういうことなの…。いろいろな思いが駆け巡り、本当に私たち親子はこれでいいのかと自問を繰り返した」
涙の再会と別れの繰り返し。悩むのはまな娘のこと。でも、癒やされるのもまな娘だった。