軍拡、人権には頬かぶり
しかしこうして国際社会で新興国の立場を代弁し、人々の生活向上を訴える中国も、南シナ海での軍事的行動では周辺国の安全保障上の脅威となり、中国国内での言論統制や人権問題には頬被りを続けている。AIIBが目指すというスリムな組織が中国による恣意的な運営の土壌になる可能性も否定できない。
習近平国家主席(62)は9月下旬の訪米の際のバラク・オバマ大統領(54)との共同記者会見で、「民主主義と人権は全人類が求めるものだが、同時に各国には歴史的な発展の段階や現実があることも認識せねばならない」と話した。オバマ氏は首脳会談で人権問題の重要性を訴えたが、習氏は聞き置くに留めたとみられる。
米中間の価値観の相違が埋まらないにも関わらず、新興国や先進国の間で中国への期待が高まる事態はオバマ政権にとって避けるべき事態だ。オバマ政権はTPPの早期実現で中国の影響力拡大にブレーキをかけようとしているが、中国の自信に揺らぎはないようだ。(ワシントン支局 小雲規生(こくも・のりお)/SANKEI EXPRESS)