講演で新興国の現実力説
AIIBが新興国から強い支持を受ける背景には、世界銀行やアジア開発銀行(ADB)など既存の国際金融機関に対する不満がある。鉄道や電力などのインフラ整備が遅れているアジア各国ではスピーディーな融資が求められるが、「官僚組織が肥大した世銀やADBは意思決定が遅く、新興国のニーズに応えられていない」との声は大きい。また世銀などは気候変動問題への配慮から、安価な発電が可能な石炭火力発電への融資を厳しく制限しており、新興国の間では使い勝手の悪さも問題視されている。
金氏は講演でAIIBは新興国主導の国際金融機関であると繰り返し、スリムな組織で迅速な意思決定を目指すとした。また石炭火力の問題についても「貧しい人たちが暗闇のなかで過ごしていることを座視するのか」と述べるなど、環境問題と新興国の生活向上のバランスをとることの重要性を指摘。「われわれが石炭火力を否定したとしても、それらの国には独自に石炭火力発電所を作る以外の選択肢は残されていない。これが新興国の現実だ」として、世銀やADBとは異なるアプローチをとる可能性を示唆した。