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時の過ぎゆくままに身を委ねてみる 長塚圭史 (2/5ページ)

2014.12.15 17:05

こうしたアナログ思考ゆえ、私は演劇なるものに没頭するのでしょうか。2015年2月上演に上演する『蛙昇天』の稽古場(仙台)にて=2014年12月7日(長塚圭史さん撮影)

こうしたアナログ思考ゆえ、私は演劇なるものに没頭するのでしょうか。2015年2月上演に上演する『蛙昇天』の稽古場(仙台)にて=2014年12月7日(長塚圭史さん撮影)【拡大】

  • 【続・灰色の記憶覚書(メモ)】演出家の長塚圭史さん(提供写真)

 ただ待ち続けること

 ずっと以前、まだ大学生の頃、つまり現在から20年ほど前に、友人と渋谷駅で待ち合わせした日のことを思い出す。私は待ち合わせそのものをすっかり失念しており、自宅で眠り込んでいた。確か待ち合わせはお昼の少し前だったはずだ。はっきりとした目的は忘れてしまったが、ほぼ毎日のように会っている同級生であり、劇団の仲間だったので、多分映画でも見てお茶しようというような、ごくごく日常的な待ち合わせだったと思う。まあいずれにしても私は完全に忘れてしまっていて、午後まで眠り続けた。目が覚めてしばらくすると、不安感が募る。だんだんと、あれ、今日何かあったような気がしてくる。はっと思い出した頃には待ち合わせ時間は2時間以上過ぎている。さすがにもう待っていないだろうと思いながらも、私は急いで駅へと向かう。

 果たして彼はそこにいた。

 彼の足下には無数のたばこの吸い殻が転がっていた(当時はまだ現在ほど喫煙者に厳しくない時代でした。彼がたばこを吸っていたのはなにせ駅の構内ですから。時代は移ろうのです)。私は謝る言葉も見つからずに彼と対峙(たいじ)した。彼は、煙をゆっくりと吐き出してから、ひとこと。

私は相変わらず何も言えぬまま…

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