中に入ると、竹と丸木が放射状に組まれた構造が面白く、竪穴式住居みたいでホッとする。茶室の緊張感はなく、解放感や温かさに包まれる。一畳の上段があり、後藤典生住職のお話によれば、そこに秀吉が座っていたそうだ。金襴豪華で派手好きなイメージのある秀吉が、一方でこのように素朴で質素な場所を楽しんでいたかと思うと、思わず笑みがこぼれる。
もう一つ、土間廊下でつながった時雨亭(しぐれてい)へ。茅葺屋根の入母屋造(いりもやづくり)、これまた珍しい2階建ての茶室である。下が待合になっており、三方の窓が開閉して眺めがよい。どちらも一般的な茶室とは赴きが異なり、その斬新さが茶室の概念を覆してくれる。
ねねは芸術文化を愛し、敵味方を問わず多くの武将たちに慕われた。お忍びの訪問も後を絶たず、武将たちはねねに頭が上がらなかったそうだ。
歴史の奧に広がる、桃山時代の成熟した美意識。秀吉やねね、利休や遠州を含めた偉人たちの息遣いが、400年の時を越えて鮮烈に伝わる貴重な場所だ。(写真・文:俳優・クリエイター 井浦新/SANKEI EXPRESS)