≪時を超え伝わる偉人たちの息遣い≫
斜面の上、秀吉の御霊を祀る霊屋(おたまや)へ。ねねが参拝のために毎日歩いた臥龍廊(がりゅうろう)は、龍の背に似ている。霊屋の厨子(ずし)の左右に、今では秀吉とねねの座像が仲良く並んでいてほほ笑ましい。須弥壇(しゅみだん)や厨子には高台寺蒔絵(まきえ)が施されており、その姿は荘厳かつ繊細で、はかなささえ感じさせる。
秀吉の辞世の句「露と落ち 露と消えにし 我が身かな 浪速の ことも 夢のまた夢」という、夢の中で夢を見ているような人生が、蒔絵の秋草の姿に重なる。狩野光信による障壁画が、互いを引き立て合う。
僕が個人的に一番好きな場所が傘亭(かさてい)だ。高台寺には複数の茶室がある。傘亭は千利休の意匠による茶室で、質素な外観は、茅葺(かやぶき)屋根の田舎民家のよう。