高台寺は豊臣秀吉の冥福を祈るために北政所(きたのまんどころ、ねね)が建てた寺。この秋、夜間特別拝観のライトアップを監修させていただくことになり、足を運ぶ機会が増えた。桃山時代の「絢爛(けんらん)」と「侘(わ)びさび」、2つの対極に位置する美意識を背景に、「悠久-光と陰-」というテーマで考えた。楽しみながらも気を引き締めて、準備を進めている最中だ。
この地へ足を運ぶたびに、ねねの慈愛に満ちた存在感と、凝縮された桃山文化の粋が心に染みる。高台寺へつづく石畳のアプローチは「ねねの道」とも呼ばれ、踏みしめる足元からしみじみとした気持ちになる。山の斜面を利用した境内には、御堂や方丈、茶室などが凝縮、調和してたたずむ。
最も心動かされたのは、自然を取り込んだ庭のつくりだ。自然物の力を最大限に生かし、借景を利用しながら、四季折々の完璧なシーンを生む。中央には偃月池(えんげつち)と臥龍池(がりゅういけ)。明鏡止水(めいきょうしすい)、風がないときは、新緑や紅葉を鮮やかに映し出す。夜は月が美しい。ねねが秀吉をしのび、月を眺めた観月台は、直接月を見るよりも、池に映った月を愛でるためのもの。粋そのものである。