推定無罪の原則により、容疑者はまだ犯人と決まっているわけではない。その状態でカツ丼を食べさせることは、絶対にNGだ。場合によっては冤罪を生み出してしまうこともある。空腹に耐えかねた容疑者が、実際にはやっていないものを「やった」という危険性があるのだ。
冤罪にならないまでも、「あのときはカツ丼を出されたからはずみでうそをついてしまったんだ」と前言撤回し、捜査は行き詰まる。あるいは裁判において「食わせてやるから罪を認めろといわれた」と一転して無罪を主張ということになれば、警察への信頼は地に落ちる。
そのため、取り調べでは、刑事と容疑者の正面からの心理戦が繰り広げられる。そこにカツ丼が入り込む隙はないのだ。