運動不足が気になって、スポーツクラブに入会したとしよう。入会金に5万円を払い、会費は毎月2万円かかる。最初の1、2カ月こそ熱心に通っていたが、仕事が忙しくて足が遠のき早1年。「通わないのならさっさとやめればいいのに」と周りは言うが、本人は退会する気になれない。
なぜか?「サンクコストの呪縛」にかかっているからである。
サンクコストとは埋没(サンク)した費用、つまり、すでに支払って、今後も回収できない費用を指す経済用語だ。この例でいえば、入会金と1年分の会費を合わせた29万円がサンクコストにあたる。
今後、奮起して運動を再開する意欲もないのに、すでに払った29万円にとらわれて、ずるずると会費を支払い続ける。その結果、無駄な出費がますます嵩む。サンクコストの呪縛により、合理的な判断ができないのだ。
サンクコストの概念は、時間を例に取るとわかりやすい。5年間付きあった彼女はどうやら結婚する気がないらしい。別れるべきか、否か。