「ある日本料理店にクウェート人カップルがいて、女性が割り箸の割り方がわからなかったそうなんです。それを隣のテーブルにいた日本人男性が親切に教えてあげたところ、クウェート人男性からひどく睨まれたというんですね。クウェートでは、お相手がいる女性に対して男性がむやみに話しかけたりしてはいけないのです」
中東では「男性が女性を庇護してあげている」という「所有者」意識が強い。たとえ親しくなった同僚とはいえ、日本人男性が部下の女性の肩などを触ったら大変なことになる。
そういったことも含め、中東全体を覆っているのはイスラム教。生活も仕事もすべてはイスラム教を抜きに語れないといっていい。お祈りの時間は仕事中であっても退席することは認めざるをえないし、豚肉は食べない、お酒は飲まないなどの制限があるので、日本流の「ノミニケーション」は皆無と思ったほうがいい。
若林氏によると、「アラブ社会のIBM」というのがあるそうだ。「Iはインシャラーの略で『すべては神のご意志で』、Bはボクランで『明日』、Mはマアレーシュで『気にするな』、つまり、すべては神様が決めることであり、明日またのんびりやろうや、という意味」なのだとか。こうしたことが理解できないと、日本人はついイライラしてしまうかもしれない。