保育園や家事代行サービス業界で、子育てが一段落したシニア世代の労働力が注目されている。人手不足が指摘される業界の「救世主」と期待されるとともに、育児や家事の豊富な経験を生かした丁寧な仕事ぶりが評価されている。働く母親らを支援する一方、シニア世代にとっても、新たな生きがいを生み出す場になっているようだ。(中井なつみ)
自分と重ねる
「先生、この本読んで!」。東京都渋谷区の認可保育園で保育士補助のアルバイトとして働く前田玉三(たまみ)さん(66)が絵本を開くと、子供たちが一斉に駆け寄ってきた。
前田さん自身、キャリアカウンセラーなどとして働きながら、共働きで長男を育てた。「働きながら子育てをする母親の大変さが分かるからこそ応援したい」と退職後に同区の保育士補助のアルバイトに応募し、7月に採用された。
園児と遊んだり、着替えたりするときの補助を担当。年齢的に疲れを感じることもあるが、「子供の笑顔で疲れも吹き飛ぶ。友人からも、『いきいきしてるね』と驚かれる」と笑顔を見せる。園児を喜ばせようと、休日にあやとりの練習をしたり、絵を習い始めたりと、新たな趣味も広がり、充実した日々を送っているという。