筒井康隆「作家としての遺言」 新刊で「凄み」や「色気」説く小説作法 (2/3ページ)

2014.3.1 18:14

実験的な小説を書き続けてきただけに、随所に自作が引用される。「同じことをやるなら、これ以上のものを書け、ということ」と笑う筒井康隆さん(野村成次撮影)

実験的な小説を書き続けてきただけに、随所に自作が引用される。「同じことをやるなら、これ以上のものを書け、ということ」と笑う筒井康隆さん(野村成次撮影)【拡大】

 「SFには〈センス・オブ・ワンダー〉っていい言葉があるけれど、驚きがあって『ぞくぞくする感じ』と言ったらいいのかな。文学賞の選考で物足りないのは、一番大事なその凄みがないから」。とはいえ、実践は簡単ではない。全く正当性がないことを自信を持って書いたときに意図せず〈凄み〉が現れることもある。〈色気〉といっても愛欲とは無関係。静謐(せいひつ)な自然描写の中に死の気配が漂い〈色気〉が発散している例もある。各項目の記述から伝わるのは自明とされる概念を徹底して疑い揺さぶる、作家ならではの視線と深い思索だ。

 「常識や良識ってやつは疑ってかからなきゃいかんね。悪いと言われていることは本当に悪なのか?もしかするとそれは非常に良いことじゃないのか、という根源的な問いを持たないと」。そんな姿勢は私生活も含めた〈品格〉の項とも関係してくる。「作品で嘘八百を書いているからこそ、自分自身のことは沈黙や嘘でごまかさない。それが僕の掟。だから(逆に作品の中だけで)道徳家ぶっている作家を見るとむかむかしますよ」

80歳近くなって怖いものがなくなってきている

産経デジタルサービス

産経アプリスタ

アプリやスマホの情報・レビューが満載。オススメアプリやiPhone・Androidの使いこなし術も楽しめます。

産経オンライン英会話

実践で使える英会話を習得!業界最高峰の講師がサポートします。毎日話せて月5000円《まずは無料体験へ》

サイクリスト

ツール・ド・フランスから自転車通勤、ロードバイク試乗記まで、サイクリングのあらゆる楽しみを届けます。

サンスポ予想王TV

競馬などギャンブルの予想情報を一手にまとめたサイト。充実のレース情報で、勝利馬券をゲットしましょう!