西加奈子さん長編「舞台」 切実な魂の旅をコミカルに (1/3ページ)

2014.2.16 07:12

自ら手がけた装画の前で話す西加奈子さん。「小説って自由、本の装置ごと遊びたい」

自ら手がけた装画の前で話す西加奈子さん。「小説って自由、本の装置ごと遊びたい」【拡大】

 今年で作家デビューから10年になる西加奈子さん(36)が長編『舞台』(講談社)を出した。「何度も訪れている、大好きな街」と話すニューヨークを舞台に、過剰な自意識に苦しむ青年が救いを見いだしていく過程を切実かつコミカルにつづった意欲作だ。(海老沢類)

 主人公の葉太は29歳。ある目的のためにニューヨークへ旅立つが、滞在初日に財布やパスポートが入ったかばんを盗まれてしまう。父が有名作家で、プライドと羞恥心が人一倍強い葉太は、そんな状況に陥っても周囲の目が気になって仕方がない。結局、助けすら求められず、帰国までの1週間、何のあてもなくマンハッタンをさまようことになる。

 「ニューヨークは街そのものが舞台みたいで、どこを切り取っても絵になるし歩いていてテンションが上がる。考えてみたら、意識のあるなしは別にして、誰もが生まれたときから何らかの役割を演じていますよね。『この世界が、もう舞台みたいなもんやな』と思って」と西さん。太宰治の『人間失格』の大庭葉蔵に似せた主人公の名から分かるように、自意識過剰な男の魂の遍歴が、華やかな街を舞台に、よりポップな装いで再演される。

主人公に寄り添い、同じ景色を見る執筆作業を通して…

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