「いまの世の中では、本当にいいものがいいと評価されているだろうか」。本書はそんな素朴な疑問から始まる。
ライカのカメラを例に「いいものというのは、古くなったら終わり、壊れたら終わりという消耗品にはならないのだ」と説く。またフランスの名車「シトロエン・DS」のフォルムの美しさをたたえ、「現代人はいま『美』を作ろうとしていないのだ」と指摘、効率性や経済性を重視する時代に警鐘を鳴らす。文化に造詣が深い著者が、美術、音楽、映画、舞台など幅広く取り上げ、本当の豊かさとは何かを記している。(PHP新書・798円)