TIH総経理(社長)の中原泰氏によれば、東芝が中国の中でも杭州を選んだのにはいくつかの大きな理由がある。
1つには、中国のPC部品メーカーが杭州を中心とした華東地区に集結していること。PCを造るのに必要なコンポーネントメーカーのうち、実に70%が華東地区に存在する。ものづくりにおいて、サプライチェーンは重要な要素だ。不要な在庫を持たないようにするため、必要な部材を必要なときに必要な数だけ仕入れるに当たり、杭州はPC製造にとって好適な場所といえる。
国内製造にこだわるメーカーもある。実際、東芝自身も以前までは東京の青梅工場でも製造を行っていた。国内製造により、品質は担保できるが、一方で物流面での無駄が生じる。例えば完成したノートPCのパッケージはアタッシェケース程度のサイズだが、筐体(きょうたい)、液晶パネル、マザーボードなど、1台のノートPCを造るのに必要な部材を個別に調達すると、かなりの体積となり物流コストがかさむ。いわばお金を使って空気を運んでいるようなものだ。中原氏によると、パーツを個別に船で輸送するより、完成品を空輸した方が安上がりになるという(そして短納期ともなる)。