それでも、ARという技術が使われた「ポケモンGO」がブームになることで、一般のARへの理解は広まり、期待も高まった。今後はどういった情報を現実の世界に重ね合わせて表示すれば、どういった利点があるかを考え、サービスにつなげる動きが活発化するだろう。
廣瀬氏のところからも、ARを使ったサービスが生み出されている。東京都千代田区にかつてあった交通博物館を、ARの技術を使ってスマートフォンの中に蘇らせるアプリ「万世橋・交通博物館 思い出のぞき窓」だ。今はマーチエキュート神田万世橋が建つ地域に行って、アプリを導入したスマホをかざすと、すでに取り壊されてしまった建物や、置いてあった車両が現れる。
こうしたARによる現在と過去とをつなぐ試みは、観光サービスを発展させそうだ。「市民が参加して、それぞれが持っている写真をウェブページに入れていく。その写真を見て、位置を調べて現在の場所を重ね合わせる」。そうすることで、地域の歴史を情報として提供して、観光客を呼び込めるようになる。行政や企業が大々的に参画しなくても、地域で過去情報のデジタル化が行えれば、低コストで地域の活性化に役立つサービスを生み出せる。
VRやAR、AI(人工知能)といった新しい技術が続々と生まれ、利用され始めている。どう使えば楽しいか、便利かといった発想から生まれてくる新しいサービスやコンテンツが、他のクリエーターを刺激して別のサービスやコンテンツを生み、そして技術の発展を促す。そんな連鎖が起こりそうだ。