今回の人事は、社外取締役5人で構成する指名委員会が決定。複数の候補者を絞り、複数回にわたって選定作業を進めてきた。役員を決めた最後の指名委員会では「志賀氏の会長昇格は誰からも異論がなかった」(東芝関係者)。グレーな人物であることは5人の社外取締役も十分に認識しており、メディアから「責任をとってけじめをつけるべきだ」と異論が出ることも承知の上で決めたようだ。
すんなり志賀氏の会長昇格が決まった背景には、国策でもある原発事業を展開するうえで、同事業に精通している志賀氏の存在がどうしても欠かせないと判断したのが大きいという。
その一つに福島第一原発の問題がある。廃炉まで40年もかかり、その作業は主に東芝と日立製作所が担当している。この事情をよく理解し、対応している志賀氏を経営の中枢から外したくないとの意向が働いた。
また、東芝は成長性の高い東芝メディカルを売却し、収益の柱がない中で、原発事業を成長ドライバーとして経営再建を果たしたいという考えが根強くある。福島第一原発の事故以降、新規建設が止まっているが、現実的には原発を活用しなければ、今後の環境規制にも対応できない。東芝としては現状の受注環境は厳しいが、将来的なニーズは十分あるとみているのだ。