「47都道府県の一番搾り」は10月にかけて順次発売予定。好評により受注量は、当初目標の120万ケース(1ケースは大瓶20本換算)の約2倍となる240万ケースに達する見込みだ。とはいえ、主力ビール「一番搾り」の16年の販売目標3640万ケースからみればその割合は約6.6%。ビール類全体の目標1億4060万ケースからみるとその割合は1.7%にすぎず、全体を押し上げるには力不足だ。
15年のキリンのビール類の国内シェアは33.4%と前年から0.2ポイント改善したものの、王者アサヒビールに6年連続で後塵(こうじん)を拝している。
新たな成長機会を求めて進出している海外でも苦戦を強いられている。15年3月期には11年に約3000億円を投じて買収したブラジル子会社の業績悪化による減損損失1100億円を計上。1949年の上場以来、初の最終赤字に転落した。ここ最近では、ブラジル子会社の1工場をベルギーのビール世界最大手アンハイザー・ブッシュ・インベブ(ABインベブ)に売却することで合意するなど目下リストラに追われている。
本格的な社内風土の変革につなげられるのか、それとも単なる実験的な試みに終わるのか。成否は未知数ながら、「47都道府県の一番搾り」で、キリンは変革へそろり一歩を踏み出した。(松元洋平)