それだけに「47都道府県の一番搾り」は「当初はできないとの声もあった」(布施社長)。一商品に対して47の違った味を用意することは、これまでの生産現場の常識ではあり得ない手法。さらに現場が反発したのは販売までの期間の短さだった。通常ビールは開発から生産までは約1年かかるとされるが、「47都道府県の一番搾り」はそれを7カ月という短期間で成し遂げた。これまでにない手法と短期間での生産によって新商品を市場に投入できたことで布施社長は「飛躍に向けた経験になるはず」と評価する。
冷ややかな声も
もっとも、キリンのこうした試みに対して、業界内では冷ややかな声もある。量産効果で生産コストを抑え、収益を追求するのが大手ビールメーカーのビジネスモデル。多品種・少量生産では効率を追求できないからだ。
競合ビールの幹部は「大手ビールメーカーにとってそぐわない商品」と言い切る。