【世界へテークオフ 国産ジェットの挑戦】(中)
100万点の部品に求めた安全性
「鳥が飛ぶ高度の変化について、データはないでしょうか」
三菱航空機技術本部の安全・開発保証グループリーダー、山口恭弘は国内の動物学者を訪ね、質問をぶつけた。2013年のことだ。国産初の小型ジェット旅客機「MRJ(三菱リージョナルジェット)」の開発をめぐり、航空当局から「鳥が以前より高い場所を飛んでいる。どこまで高度を上げれば安全か根拠を示せ」と求められたためだ。
飛行制御などのエンジニアだった山口にとって動物学は畑違いだ。しかし、高速で飛ぶ航空機が鳥と衝突する「バードストライク」は、操縦席へのダメージやエンジン停止など重大事故にもつながる。
国内外の文献を読みあさった山口は「どこが答えなのか全く分からない。想像を絶する仕事だった」と振り返る。