開発には約5年を費やした。設計段階では「プリプレグ(炭素繊維を一方向に並べ樹脂を染みこませたシート)」と呼ばれるカーボン素材をどの方向に何枚重ね合わせれば剛性や弾力性を確保できるかが鍵を握る。同社にはテニスラケットなどの開発を通し40年近くかけて蓄積してきた膨大なデータがあり、これが高性能ロードバイク開発に生かせると判断したのだ。こうして設計した試作品をプロのライダーに検証してもらうという地道な作業を繰り返した。
同社のもう一つの強みが、国内メーカーにはほとんど例を見ない、国内工場での製造態勢だ。軽量化には、プリプレグの重なりを極力排するとともに、肉厚を均一に仕上げるという高い技術が求められる。同社の新潟工場にはカーボン製品を製造する400人強の職人がいるが、フレーム作りを任せられるのは優秀な職人だけだという。
製造技術を担当していた事業開発部の前田祥吾氏はこうした製造態勢の下で「日本人が作るからこそ高い品質が確保できる」と話す。