しかし、楽観の中で思考停止しては危険だ。現在の収益力は、追い風の中で出来過ぎの要素が含まれる。持続的成長を可能にするための真の競争力の追求はなお道半ばと考えるべきだろう。新興国市場での成長、革新的な商品力や技術力に裏付けされた競争力と収益力を確立できて本物の復活と呼ぶに相応しい。
想定以上の業績改善を牽引(けんいん)した、「米国」「円安」「輸出」という3つのキーワードは古い構造に成り立つ。2000年代の米自動車最大手ゼネラルモーターズ(GM)がそうであったように、パラダイムが変化していながらも古い構造の中で繁栄を延長させることは時に可能だ。
だが、厄介なことに、古い枠組みのもとでの勝ちすぎは不可欠な構造変化を遅らせ、命取りになりかねない。トヨタはどん底の2010年当時の思いを忘れずに、風通しの良い組織作りと経営改革を推進することが望まれよう。