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「まあまあが一番」の気持ち大切に 舞台「つんざき行路、されるがまま」 高田聖子さんインタビュー
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「稽古は苦しいけれど、公演が終わったらまたやりたいと思う。まあまあが一番」と話す、女優の高田聖子(しょうこ)さん=2014年10月7日、東京・下北沢(寺河内美奈撮影) 「きっぷのいい姉さん」のイメージが強い高田聖子(しょうこ、47)が「口笛」役に挑戦する。東京・下北沢ザ・スズナリで16日まで上演している「つんざき行路、されるがまま」は、現代の東京を舞台にした、どこにでもいそうな夫婦の、妻が実は口笛で、いつの間にか姿を消すという、不思議な人間模様を描く。「口笛とは何なのか、答えは見る人それぞれが感じてほしい」
劇団☆新感線の看板女優である高田が、1995年に立ち上げたプロジェクトが進化した「月影番外地」の公演。女優として与えられる役をこなすだけでなく、企画や題材、配役まで一から自分でやってみようという取り組みだ。演出はこの企画のパートナーである木野花、脚本は前回からタッグを組む福原充則に依頼。今回は「鶴の恩返し」など、人間ではない種類のものと結婚する「異類婚姻譚」をやってみようか、というアイデアから始まった。ならば動物ではなく、風や音などと人間が結婚してたら面白い、という話が出て、福原が書いてきたのが「口笛」だった。
東京の片隅で仲むつまじく暮らす夫婦。突然、妻がいなくなり、驚いた夫が警察に駆け込んだところ妻の戸籍がなく、この世に存在していなかったことが判明。周囲の人に聞くと「あなたはいつも一人寂しく口笛を吹いていた」と言われて呆然(ぼうぜん)とする。必死に妻を探しているうちに、妻の正体が口笛で、その旋律から喚起される感情だったと分かってくる-。
妻を高田が、夫を劇団☆新感線の粟根まことが演じる。演出は、このプロジェクトで高田のパートナー的存在である木野花が担当。木野が「これは究極の愛!」と話すように、ミステリアスな大人のラブストーリーでもあり、「口笛」に値する何か大切なもの、それが奪われているかもしれないことに警鐘を鳴らす、社会派的な側面を持った舞台でもある。
小学生のころ、亡くなった祖母の葬式でなぜか口笛を吹いてしまい、つまみだされた、という思い出がある。「どうして吹いたのか今もよく分からない。口笛は、気分のいい時は自然に口をついて出るように、本当に思っている心の底の気持ちが出てしまうようなもの。そうしたことを失いつつある現代社会を表現したい気持ちもある。演じていて、自分が活動家のように感じたり」
薬師丸ひろ子に憧れて女優を志し、大阪芸術大学に入学後、劇団☆新感線に入った。以降は舞台、テレビ、映画と順調に活動の幅を広げてきたが、「月影番外地」での活動は「修業」という。「劇団では恋愛ものもあまりやったことがない。不得意なものに挑戦させてもらえる機会でもあります」
どう観客に伝えるかで葛藤する稽古は苦しい。ただドラマで共演した芸人、ほんこんに言われた「まあまあが一番」との気持ちを大事にしている。「舞台が終わって打ち上げして、一晩寝て起きたら『ああ楽しかった、またやりたい』と思うもの。稽古の苦しさとあいまって『まあまあ』になるのだと思います」
稽古のストレス解消は「ひたすらキャベツを切ること。蒸し焼きにして食べてます」と笑う。「体で表現することにも興味がある」と、将来はダンスを本格的に舞台でやってみたいと考えている。(文:藤沢志穂子/撮影:寺河内美奈/SANKEI EXPRESS)
2014年11月16日まで、下北沢ザ・スズナリ。問い合わせ:サンライズプロモーション (電)0570・00・3337