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紙と鉛筆で映画「幸運だった」 宮崎駿監督にアカデミー名誉賞

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紙と鉛筆で映画「幸運だった」 宮崎駿監督にアカデミー名誉賞

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 卓越した業績を残した世界の映画人に贈られる米アカデミー名誉賞の授与式が8日、米ロサンゼルス・ハリウッドで行われ、日本のアニメ映画監督、宮崎駿(はやお)さん(73)らが栄冠を手にした。日本人としては、1990年に黒澤明監督が受賞して以来、24年ぶり2人目となる。

 アナ雪監督と抱擁

 タキシード姿の宮崎監督は舞台上で金色のオスカー像を受け取り、アニメ製作がCG全盛時代を迎える中、「紙と鉛筆とフィルムで映画を作れた最後の時代に参加できたことは幸運だった」と挨拶。プレゼンター役で、「アナと雪の女王」の製作総指揮を務めた米アニメ映画監督、ジョン・ラセターさん(57)と肩を抱き合って喜んだ。

 宮崎監督は「千と千尋の神隠し」で、アカデミー賞長編アニメ賞やベルリン国際映画祭金熊賞などを受賞。今回の授賞理由について、主宰する米映画芸術科学アカデミーは、「もののけ姫」で1990年代後半に世界的に有名になる前から「風の谷のナウシカ」や「天空の城ラピュタ」「となりのトトロ」などの作品が日本で絶大な支持を受けていたと説明、長年の功績をたたえた。

 宮崎さん以外の名誉賞受賞者は、アイルランド出身の女優、モーリン・オハラさん(94)とフランスの脚本家、ジャンクロード・カリエールさん(83)。名誉賞とは別に人道分野で功績があった映画関係者をたたえる「ジーン・ハーショルト人道賞」には、米俳優で社会活動家のハリー・ベラフォンテさん(87)が選ばれた。

 長編改めて否定

 式の終了後、記者会見した宮崎監督は「きょう一番うれしかったことは、モーリン・オハラさんに会えたこと」と、ジョン・フォード監督の名作「わが谷は緑なりき」(1941年)でヒロインを演じた名女優の名前を何度もあげて会場を沸かせ、「90歳や80歳の人と会って、本当に自分は小僧だな、と思った。リタイアとか言わないで、できることをやっていこうと思いました」と続けた。

 宮崎監督は昨年、長編アニメの製作から引退すると発表。今後は短編アニメに取り組む姿勢を示している。ところが、この「リタイア否定発言」を聞いた報道陣からは、新たな長編アニメ製作の可能性を聞き出そうとする質問が殺到。だんだん険しい表情になっていった宮崎監督は「そういう上手な結論にはいきません。そこは変わらないです。自分に何ができるのか、何ならやるに値するのか、これなら面白そうだ、ということが一致しないといけない。お金や人材の条件もある」と一徹な“宮崎節”でぴしゃりと締め、長編への取り組みを改めて否定した。

 今後の作品製作について、三鷹の森ジブリ美術館で公開される短編アニメの製作を中心に進める考えを示した宮崎監督。

 「できなくなってもやろうとすると思う。そう生きると決めているので。仕事でやるのか、道楽なのかは判断がつきませんけど」。生涯アニメを作り続ける気持ちをこう語った。(SANKEI EXPRESS

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