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自然の中で作者は消えてしまうべきだ 「白樺の森建築プロジェクト」 ジャン=ミシェル オトニエルと隈研吾

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自然の中で作者は消えてしまうべきだ 「白樺の森建築プロジェクト」 ジャン=ミシェル オトニエルと隈研吾

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こころの門,2014.(提供写真)。(C)Jean-Michel_Othoniel/ADAGP,Paris&JASPAR_Tokyo,2014.Courtesy_Galerie_Perrotin  【アートクルーズ】

 シラカバの林の中に、自然に溶け込んだチャペルをつくろうという「白樺の森建築プロジェクト」が、長野県軽井沢町の「軽井沢ニューアートミュージアム」でスタートした。ガラス作品で世界的な注目を集めるフランスのジャン=ミシェル オトニエル氏(50)と、日本を代表する建築家・隈研吾氏(59)とのコラボレーション。アート作品とともに式を挙げるアートウエディングの施設として新たな名所となりそうだ。

 愛のつながり重視

 すでにオトニエル氏によるオブジェ「こころの門」が、建設予定地に設置されている。金属製で高さ3.65メートル。赤と白の球がつながってできたハートが2つ組み合わされている。遠目には、紅白の水引を想起させ、まさに祝福される2人が“結ばれる”イメージだ。

 オトニエル氏は7月9日に開かれた記者発表会で「こころの門」について、「ハートを題材にした連作の一つ」と位置づけ、「2人の愛のつながりを重視した。結婚に限らなくてもいい。感動や人生を分かち合いたいと思う感情が重要だ」と話し、作品が、2つのハートが互いに支え合い、抱き合っている姿を表現したことを明かした。

 できあがるチャペルでは、こころの門を2人がくぐることで愛を誓う。オトニエル氏はチャペルが「21世紀の場所として、すべてに開かれるべき」で、特定の宗教や人種に限らず、同性愛の結婚にも利用してほしいとの考えを示した。

 来年春に完成するチャペルの建設は、隈氏が担当。隈氏は記者発表会で、建設のコンセプトとして「軽井沢は風の質が違う。その空気感そのものを結晶化したい」と話した。

 ある種の存在感に

 現時点のイメージでは、シラカバの幹がチャペルの外にも中にも並び、地面に生えているコケも、建物の内外につながっている。「中と外がどれだけ溶け合えるのか。何かと何かを分けるのを超えたい。それを世界に対するメッセージにしたい」と宣言した。

 日本建築は、自然の景観や風を取り込んだものも多いが、隈氏は「地面より一段高くなっている床も地面とつながるようにしたい」と斬新な工法に挑戦する。

 オトニエル、隈両氏が最後に意気投合したのは、「作品の後ろで、作者は消えてしまうべきだ」という考え方。隈氏は「作者2人が軽井沢の自然の中で消えることが、ある種の存在感につながる」と締めくくった。

 「DNA」常設展も

 軽井沢ニューアートミュージアムでは、今月(7月)11日から来年6月29日まで、常設展「ジャン=ミシェル オトニエル『愛の遺伝子展“DNA of Love”』」も開かれている。

 イタリア・ベネチアのムラーノガラスを使った作品は、ガラスの透明感と金属的な輝き、色のグラデーションが美しい調和を見せている。

 オトニエル氏の作品は来春までに、フランスのべルサイユ宮殿庭園内にも永久設置されることが決まっている。この庭園に新しい彫刻が展示されるのは、およそ300年ぶりという。

 今回のプロジェクトを監修した伊東順二東京芸大教授は「素材と表現が融合し、部分が全体を表し、永遠に続くことを連想させる。生きているように、増幅するように感じられる作品で、まさにDNAという名がふさわしい」と評した。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 ■Jean-Michel Othoniel 1964年フランスのサン・エティエンヌ生まれ。80年代から硫黄や鉛など可変性の素材を使った作品を、90年代からムラーノガラスを使った作品を手がける。2003年、カルティエ現代美術財団で初の個展。11年にポンピドゥセンター(パリ)で開いた初の回顧展で20万人を集める。13年、六本木ヒルズ毛利庭園にパブリックアート「Kin no Kokoro」を設置。

 ■くま・けんご 1954年横浜生まれ。東京大学建築学科大学院修了。慶大、東大などの教授を務め、97年「森舞台・登米町伝統芸能伝承館」で日本建築学会賞、「水/ガラス」でアメリカ建築家協会ベネディクタス賞を、2002年「那珂川町馬頭広重美術館」をはじめとする一連の木の建築で、スピリット・オブ・ネイチャー国際木の建築賞を受賞するなど、国内外で高い評価を得ている。

 【ガイド】

 「ジャン=ミシェル オトニエル『愛の遺伝子展“DNA of Love”』」 来年6月29日まで、軽井沢ニューアートミュージアム(長野県軽井沢町軽井沢1151の5)。一般1500円(入館料)。問い合わせ(電)0267・46・8691。

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