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日本の装飾性、平面性が与えた影響 華麗なるジャポニスム展

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日本の装飾性、平面性が与えた影響 華麗なるジャポニスム展

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モネ「ラ・ジャポネーズ(着物をまとうカミーユ・モネ)」(1876年、提供写真)。1951_Purchase_Fund_56.147  【アートクルーズ】

 日本文化が19世紀以降の欧米美術に影響を与えたジャポニスム。それを米国ボストン美術館の収蔵品によって検証する「華麗なるジャポニスム展」が、6月28日から世田谷美術館(東京都世田谷区)で開かれる。ジャポニスムを象徴する印象派画家クロード・モネ(1840~1926年)の「ラ・ジャポネーズ」が1年の修復後、初公開されて、新事実が紹介されるほか、アメリカなどヨーロッパ以外の国々への影響にもスポットが当てられる。

 ラ・ジャポネーズは1876年、モネが妻のカミーユをモデルに描いた大作(縦2メートル31、横1メートル42)。日本の着物(打ち掛け)を着て、うちわ、扇子、ござに囲まれたカミーユが、金髪のかつらをかぶって、ほほ笑んでいる。カミーユの髪は本来、褐色だが、モネが色の対比を考えて金髪にさせた。題名通り、日本趣味の品々に演出された象徴的な絵だ。

 モネの名作、修復と新発見

 今回の修復では、モネが印象主義で光の効果を生み出すために、最新の化学顔料を使っていたことや、X写真によって、うちわの位置やカミーユの手元を何度も描き直していることが分かった。うちわは着物のすその曲線と呼応し、渦巻くようにカミーユを囲んで、動きを与える効果を出している。

 着物に刺繍(ししゅう)であしらわれた武者絵については、謡曲(能)「紅葉狩(もみじがり)」で、平惟茂(たいらのこれもち)が鬼女を切り伏せようと刀を抜く場面とみられることが、最近の研究で分かってきている。

 今回は長い年月でできたくすみが取り除かれたラ・ジャポネーズを鑑賞できるほか、こうした最前線の研究成果も知らされる。

 今回展示されるのは約150点。日本趣味そのものをそっくり商品に取り入れた「ジャポネズリー」のインクスタンドなどのほか、日本の浮世絵などからヒントを得て、自分の作品の中で新たな表現にまで昇華させた作品も、影響を受けたオリジナルと対比させる形で並ぶ。

 「ボストン」収蔵品だからこそ

 浮世絵の影響などが知られているモネ、ゴッホ、マティスらフランスを中心にしたヨーロッパの画家のほか、今回、注目されるのはアメリカの画家だ。例えばジェームズ・アボット・マクニール・ホイッスラー(1834~1903年)。英国で活躍した間に浮世絵の影響を受け、その影響は、アメリカの画家アーサー・ウェズリー・ダウ(1857~1922年)らに影響を与えた。

 ジャポニスムは印象派を中心としたアーティストに影響を与え、その後も、フォービズムや抽象画など絵画を中心とする美術の大変革の起爆剤になった。

 世田谷美術館学芸部の遠藤望企画担当課長は「ジャポニスムはヨーロッパ以外にもさまざまな影響を与えている。アメリカにもジャポニスムが影響を与えていることが分かるのは、ボストン美術館の展覧会だからこそ」と指摘。さらに「19世紀末から20世紀初頭にかけ、日本美術の装飾性や遠近法のない平面性は、西洋の意識まで変えたという意味で、深い。そうしたことまで考えながら見ていただけたら」と話した。(原圭介/SANKEI EXPRESS

 【ガイド】

 ■「ボストン美術館 華麗なるジャポニスム展」 6月28日~9月15日まで、世田谷美術館(東京都世田谷区砧公園1の2)。月曜(7月21日、9月15日除く)休館、7月22日休館。一般1500円。問い合わせはハローダイヤル(電)03・5777・8600。

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