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中国・北朝鮮に「隙間風」 日本外交の好機 関係悪化顕著に

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中国・北朝鮮に「隙間風」 日本外交の好機 関係悪化顕著に

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金正恩(キム・ジョンウン)氏と張成沢(チャン・ソンテク)氏の関係=2013年12月13日、※敬称略。写真は聯合ニュースなど  北朝鮮と中国の関係悪化が顕著になってきた。

 中国の習近平国家主席(61)が7月3、4両日に訪韓。中国の最高指導者が就任後に北朝鮮より先に韓国を訪問するのは初めてで、北朝鮮は中国への反発を強めている。朝鮮労働党機関紙「労働新聞」も、“大国主義者”という表現で中国を暗に批判した。

 中韓首脳会談を前にした6月28日付労働新聞は論説の中で、「偉大なる大元帥さまたちの領導があったので、帝国主義者たちのどんな強権策動も、大国主義者たちの圧力もわれわれ人民を屈服させられなかった」と主張した。

 北朝鮮では一般的に「偉大なる大元帥たち」は金日成主席と金正日総書記を、「帝国主義者」は米国を指す。大国主義者については、北朝鮮政治が専門の礒崎敦仁・慶応大学専任講師は「北朝鮮では以前から使われている表現で、主に米国、さらには旧ソ連や日本を非難する際に使われた。今回は『大国主義者たち』と複数形になっているので、この中には中国も含まれているだろう」と指摘した。

 北朝鮮は昨年(2013年)、今後の国家方針として、経済建設と核開発を同時に進める「並進路線」を決定。逆に中国は北朝鮮に対し核放棄の圧力を強めており、両国の溝は深まるばかりだ。

 一方、金総書記の死去後、権力を引き継いだ金正恩第1書記の公式訪中はまだ行われていない。金総書記も金主席の死去後、中朝関係悪化を背景に6年間訪中しなかったことがある。

 また北朝鮮にとって中国は最大の貿易相手国だが、昨今の中朝関係悪化により、今年1~3月には中国の原油輸出がストップするなどエネルギー輸出量が大きく減っている。その上、南北関係も冷え込む中で、北朝鮮は最近、日本との対話再開に踏み出した。

 礒崎氏は「中朝や南北関係が悪化すればするほど、日朝関係には有利に働く側面がある。現在、日韓関係も悪化しており、事前に韓国と調整する必要もないので日本はフリーハンドで動ける。日本外交にはまたとないタイミングだ」と分析している。(水沼啓子/SANKEI EXPRESS

 ≪金日成主席死去20年 3代世襲の正統性強調≫

 金日成(キム・イルソン)主席の死去から7月8日で20年を迎えた北朝鮮では、平壌で金正恩(ジョンウン)第1書記が出席した中央追慕大会など記念行事が行われた。7月8日付の朝鮮労働党機関紙、労働新聞も金主席の“不滅の業績”をたたえ、金日成・正日(ジョンイル)・正恩の3代世襲による統治の重要性を強調した。

 北朝鮮メディアなどによると、金永南(ヨンナム)最高人民会議常任委員長が中央追慕大会で、「われわれは偉大な金日成同志と金正日同志の崇高な愛国の意思を奉じ、祖国統一の歴史的偉業を成就させ、国の対外関係を発展させる」などと演説した。

 朝鮮中央テレビが放映した映像では金第1書記は追慕大会と、金主席の遺体が安置されている錦繍山太陽宮殿を訪れた際、足をひきずるように歩いていた。最近、金第1書記の負傷や健康悪化に関する情報は一切伝えられていない。

 金主席の死後、北朝鮮は核実験や長距離弾道ミサイルの発射を繰り返すなど、強硬姿勢を崩していない。一方で、国際社会からは制裁を受け、経済・食糧難から抜け出せないままだ。北朝鮮が最近、対日関係改善を模索する背景にもこうした事情がある。

 金第1書記としては、金主席死去20年の節目を利用する形で、3代にわたる権力世襲の正統性を住民らに改めて強調し不満を抑え込む狙いがあるとみられる。

 報道によると平壌ではこの日、多数の市民が「万寿台の丘」におもむき、金主席と金正日総書記の像に献花する光景がみられた。(ソウル 名村隆寛/SANKEI EXPRESS

 ≪北朝鮮軍が境界線越え侵入 韓国の通信機器破壊≫

 韓国国防省関係者は7月8日、北朝鮮の朝鮮人民軍の兵士が6月19日、南北軍事境界線を越えてソウル北方に侵入、韓国軍が最前線に設置した通信機器を破壊して北へ逃げ帰ったと明らかにした。韓国側は追跡し、境界線近くで発砲したという。

 韓国国防省関係者は、今年に入り北朝鮮が、境界線直近の南北の非武装地帯内で活動を活発化させていると指摘。聯合ニュースによると、今年だけで5回、境界線の南側まで人民軍兵士が入ってきたことが確認されたという。

 韓国国防省関係者の話などによると、6月の侵入では、北朝鮮からの亡命希望者から連絡を受けるため、韓国軍が境界線近くに設置したインターホンが鳴り、韓国軍が呼び掛けたものの返事がなかったため韓国軍部隊が出動した。現場では、インターホンが設置場所からもぎ取られていた。韓国軍部隊は発砲しながら境界線の南約50メートル付近まで前進した。現場の監視カメラには北朝鮮の兵士3人が写っていたという。(共同/SANKEI EXPRESS

 ■中朝関係 中国と北朝鮮は1949年に国交を樹立。朝鮮戦争(50~53年)では中国人民義勇軍が参戦、61年には中朝友好協力相互援助条約を締結し、冷戦時代には強固な「血の友誼」関係を築いた。しかし92年の中韓国交樹立で一気に冷却化し、中朝間の首脳級交流が途絶えた。94年の金日成主席死去後も長らく関係悪化が続いたが、99年6月、金永南最高人民会議常任委員長が訪中し、関係改善に向かう。2000年5月に金正日総書記が訪中、01年9月には江沢民国家主席(87)が公式訪朝するなど首脳往来が復活した。

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