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【拉致再調査】正恩氏「陰の秘書官」 強権の委員長 拉致調査委、実行機関は加わらず

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【拉致再調査】正恩氏「陰の秘書官」 強権の委員長 拉致調査委、実行機関は加わらず

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北朝鮮への独自制裁の一部解除を表明する安倍晋三(しんぞう)首相=2014年7月3日午前、首相官邸(酒巻俊介撮影)  北朝鮮の調査委員長に就くソ・テハ氏とはどんな人物か。肩書から、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記(31)の“陰の秘書官”といえるほど強い権限をもっていることが指摘されている。調査委は国家安全保衛部をはじめ、北朝鮮の主要機関を横断する布陣だ。しかし、拉致を実行した朝鮮労働党工作機関が入っておらず、再調査の実効性が担保されるか疑わしい面もある。

 ソ氏について北朝鮮は、保衛部副部長兼「国防委員会安全担当参事」の肩書で紹介した。軍出身の70歳前後とされるが、ほとんど公の場に登場していない。

 秘密に迫る鍵は「金第1書記就任と前後し、権限集中により体制が強化された秘書室にある」と、北朝鮮の権力構図を研究する李相哲龍谷大教授は解説する。秘書室メンバーの多くは国防委の重要政策担当の参事や、党各部を仕切る第1副部長級を兼ねるとされる。

 2月の南北離散家族再会の際も、北朝鮮側責任者は「国防委政策担当参事」で、実際は秘書室の主要メンバーとされた。“陰の官邸”である秘書室メンバーとして金第1書記の直接指揮下にあることが重要で、ソ氏も強い権限を委ねられていると考えられる。

 調査委には人民武力部などさまざまな機関が網羅されている半面、各分科会の責任者はソ氏同様ほとんど素性が知られていない。李教授は「経歴が知られた人物を出したくなかったのだろう。事務方エリートは国内でも顔を知られないように配慮している」と話す。

 一方で、横田めぐみさん=拉致当時(13)=ら日本人拉致を実行した党工作機関は全く含まれなかった。保衛部は一部拉致被害者を含む外国人を管理しているとされるが、機密を知る被害者は依然、党機関が掌握しているといわれる。

 北朝鮮は調査委が「全ての機関を調査できる」とうたっているが、北朝鮮最大の“暗部”に踏み込める保証はない。被害者支援組織「救う会」会長の西岡力東京基督教大教授は「特に北が『死亡』とした8人についてきちんと再調査するか非常に疑問だ」と指摘している。(桜井紀雄/SANKEI EXPRESS

 ≪賭けに出た安倍首相「今がラストチャンス」≫

 「これはスタートでしかない」。安倍晋三首相は7月3日、北朝鮮に対する制裁の一部解除を決めた関係閣僚会議後、厳しい表情で語った。首相周辺は「今が拉致問題解決の最後のチャンス」とにらむ。それだけに、賭けに出た首相は外務省をはじめ政府関係者に入念な極秘協議を命じていた。

 4月12日、愛知県の中部国際空港。外務省の小野啓一・北東アジア課長は、通訳の部下1人を連れ、中国・大連行きの飛行機に乗り込んだ。大連行きの直行便は成田空港からも出ているが、マスコミの目を避けるため出発地を変えた。

 拉致被害者の再調査をめぐり、小野氏は昨年(2013年)末からベトナム・ハノイや中国・上海などで北朝鮮と極秘に協議を重ねていた。3月末に日朝局長級協議が1年4カ月ぶりに再開してからはほぼ毎週末、接触した。

 極秘協議には金指導部に直結する国家安全保衛部の幹部とみられる人物が参加。「名乗らないが、保衛部の副部長クラスが出てきた」(外務省幹部)ことも、日本が真剣に交渉を続ける裏付けになった。

 複数の日本政府関係者によると、4月以降は、日本が独自に実施している経済制裁が主な議題になった。北朝鮮側は「包括的かつ全面的」な再調査を約束し、その見返りとして「これを解除してほしい」と具体的に要望してくるようになった。

 「拉致被害者の全員帰国」を掲げる首相。超党派議員でつくる「拉致議連」の平沼赳夫(たけお)会長(74)は3日の記者会見で「政府がやっていることを応援したいが、北朝鮮には随分だまされてきた」と懸念を示した。そうした声に首相は自信を示した。「大丈夫。安倍政権が北朝鮮にだまされることはないよ」(SANKEI EXPRESS

 【解除が見込まれる日本の対北朝鮮制裁】

 ヒト

・北朝鮮籍保有者の原則入国禁止

・訪朝した朝鮮総連幹部の原則再入国禁止

・日本から北朝鮮への渡航自粛要請

 モノ

・人道目的に限った北朝鮮籍船舶の入港禁止

 カネ

・300万円超の北朝鮮への送金報告義務

・10万円超の北朝鮮への現金持ち出し届け出

 【北朝鮮拉致調査委の主なメンバー】

 委員長

ソ・テハ(北朝鮮国防委員会安全担当参事)

 副委員長

キム・ミョンチョル(国家安全保衛部参事)

パク・ヨンシク(人民保安部局長)

 各分科会責任者

拉致被害者 カン・ソンナム(保衛部局長)

行方不明者 パク・ヨンシク(人民保安部局長(副委員長兼務))

遺骨問題  キム・ヒョンチョル(国土環境保護省局長)

残留日本人 李虎林(朝鮮赤十字会書記長)

 ※日本政府に対する北朝鮮側の説明による

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