SankeiBiz for mobile

【G7サミット】ウクライナ支援表明、対露追加制裁も

ニュースカテゴリ:EX CONTENTSの政治

【G7サミット】ウクライナ支援表明、対露追加制裁も

更新

 ≪威圧的な中国の海洋進出牽制≫

 日米欧とカナダの先進7カ国(G7)首脳会議(サミット)が6月4、5両日(日本時間5日)、ベルギーの首都ブリュッセルで開かれた。焦点のウクライナ情勢では、5月の大統領選で勝利したペトロ・ポロシェンコ氏(48)を次期大統領として歓迎、安定化に向け結束して支援するとの首脳宣言を採択した。ポロシェンコ氏との協力をロシアに求め、応じなければ情勢次第で追加制裁を科す用意があると警告した。

 安倍晋三首相(59)は会議で、ウクライナ情勢は「他の地域の問題に連動してくる」と指摘。中国の領有権主張や海洋進出を念頭に「力による威嚇は許されない」と述べた。首脳宣言は「東シナ海や南シナ海での緊張を深く懸念」した上で、現状を変更する「いかなる一方的な試みにも反対」すると強調。法の支配の重要性を訴え、名指しを避けつつ中国を牽制(けんせい)した。

 経済分野では、ロシアを念頭にエネルギーを政治的な威圧や安全保障上の脅威として利用してはならないと非難。環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)は、早期妥結を目指すと明記した。

 北朝鮮の核・ミサイル開発を強く非難し、完全核放棄を要求。拉致を含む重大な人権侵害に「迅速な対応」を促した。

 今月(6月)7日に就任するポロシェンコ氏を次期大統領として承認するよう要請。ウクライナとの国境付近に残している軍部隊を完全撤退させ、東部で活動する親ロシア派の武装解除へ影響力を行使するよう求めた。プーチン政権が協力しなければ「対象を特定した制裁を強化するとともに、重要な追加的制限措置を実施する用意がある」と警告した。

 安倍氏は「ロシアに責任ある国家として国際問題に関与させていくことが重要だ」と表明。「中長期的なウクライナの安定実現に向け、引き続き協力していく」とも語り、日本として経済支援で積極的役割を果たす考えを示した。

 G7はロシアと共に主要国(G8)首脳会議を開く予定だったが、ウクライナ情勢で対立したロシアを外した。来年以降、再びG8体制に戻るかどうかも今後の焦点だ。(共同/SANKEI EXPRESS

 ≪正念場のG7 国際秩序への挑戦に結束≫

 ウクライナ情勢を受けてロシアを除外し、G7として17年ぶりに行われた首脳会議で、各国首脳らはウクライナ支援や対ロシア圧力堅持などで一致した。ロシアによるウクライナ南部クリミア半島の併合など、冷戦後の秩序への挑戦に対して結束を示した形だ。だが、価値観を共有するG7が今後も影響力を保てるか、正念場が続きそうだ。

 「われわれは声を一つにした」。フランソワ・オランド仏大統領(59)はG7初日の6月4日、会議終了後に団結を強調し、「ここにいない者は特に耳を傾けねばならない」とウラジーミル・プーチン露大統領(61)を牽制した。

 ウクライナ情勢ではこれまで、対露強硬姿勢を主張する米国と、天然ガスなどをロシアに依存する欧州の間で、制裁などをめぐる温度差が指摘されてきたが、G7首脳は追加制裁を含め、ロシアへの圧力を維持することなどで協調を確認した。

 欧米は5月のウクライナ大統領選の結果に意を強くしている。1回目の投票で、他候補に大差をつけて当選を決めた親欧米派のポロシェンコ次期大統領には「正統性」があり、ロシア側もこの結果には抗しがたいとみるためだ。欧州連合(EU)のヘルマン・ファンロンパイ大統領(66)も「ゲーム・チェンジャー(事態を一変させるものごと)」だったと指摘した。

 ただ、結束を確認した欧米も一枚岩とは言い切れない側面がある。

 仏では6日、第二次世界大戦中の「ノルマンディー上陸作戦」の70周年を記念した式典が予定されており、仏英独3カ国の首脳は訪仏するプーチン露大統領と個別に会談する。アンゲラ・メルケル独首相(59)は「肝心なのは建設的であることだ」と指摘。欧州側は露側との対話に比重を移しつつある。

 一方の米国は公式会談を外相間にとどめ、バラク・オバマ大統領(52)はプーチン氏との間柄を「ビジネスライク」なものと位置づけている。ロシアが米欧の態度の隔たりにつけ込む可能性は残る。

 またG7首脳は今回、東シナ海、南シナ海の情勢をめぐり中国を牽制した。危険性を訴えてきた日本の認識を各国が共有した結果で、価値観を共にするG7の原点を確認したといえる。だが、その中露は互いに接近を図る。5月下旬の首脳会談では「国家の歴史的経緯や政治制度、価値体系は尊重されねばならない」と欧米の価値観押しつけへの対抗心をあらわにした。

 G7の世界経済に占める比率は17年前の6割超から5割以下に低下した。相対的な影響力の低下は否めない。国際秩序が「無極化」し、「羅針盤のない領域に入った」(欧米筋)との懸念もあり、不透明な国際情勢は当面、続きそうだ。(ブリュッセル 宮下日出男/SANKEI EXPRESS

ランキング