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【拉致再調査】「今回は違う」「最初で最後」 北制裁一部解除 拉致被害者家族に期待と不安

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【拉致再調査】「今回は違う」「最初で最後」 北制裁一部解除 拉致被害者家族に期待と不安

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 政府は7月3日、北朝鮮に科している独自制裁の一部を解除する方針を決めた。北朝鮮が(7月)1日の日朝協議で伝えてきた日本人拉致被害者の安否再調査などを行う「特別調査委員会」の陣容について、党や軍など全機関を調査できる権限を持ち実効性が見込めると判断した。4日に北朝鮮側が調査に着手したのを確認した後、閣議で正式決定する。北朝鮮による調査は10年ぶりだが、拉致被害者家族は何度も裏切られてきた。「今度は違う」。「最後のチャンス」。家族との再会への期待と不安を胸に調査の行方を見つめている。

 政府間交渉を注視

 安倍晋三首相(59)は3日、「国家的な決断と意思決定ができる組織が前面に出て、かつてない態勢ができたと判断した」と、解除の理由を説明した。

 政府の発表によると、調査委は金正恩(キム・ジョンウン)第1書記がトップを務める国防委員会から権限を付与される。総勢30人程度で、拉致被害者の安否情報を握るとされる「国家安全保衛部」も参加。「拉致被害者」「行方不明者」「日本人遺骨問題」など4つの分科会を設ける。

 制裁解除の対象は、(1)人的往来の規制(2)北朝鮮居住者らへの送金、現金持ち出しの届け出規制(3)人道目的の北朝鮮船籍船舶の入港禁止-の3項目。貨客船「万景峰(マンギョンボン)92」の入港禁止措置は継続する。

 北朝鮮が拉致被害者の安否について調査し回答したのは2004年が最後。この時、横田めぐみさん=拉致当時(13)=のものとする「遺骨」を提示。その後、日本側のDNA型鑑定で別人のものと判明した。北朝鮮は日本側が安否について確認を求めてきた被害者のうち「8人死亡」との主張を一貫して変えていない。

 「8人死亡」の説明は

 めぐみさんの父、滋さん(81)は3日、調査委の態勢について「今回はこれまでと違って効果が出てくると思う」と期待。制裁の一部解除には「北朝鮮にとってもメリットがあると思うので、上手にやっていってほしい」と話した。母、早紀江さん(78)は「もういいかげんに誠意をもってきちんとしてくださいと言いたい」と、訴えた。

 田口八重子さん=拉致当時(22)=の兄で家族会代表の飯塚繁雄さん(76)は「最初で最後の交渉という気持ち。期待が裏切られないよう、政府はきちっとした行動をしてほしい」と話し、「被害者の名前が出てこなければ進展とはいえない」と求めた。

 「『死亡』とされた8人についてどう説明するかが焦点だ。北朝鮮が間違いを認め、みんなを帰してほしい」と訴えたのは、市川修一さん=拉致当時(23)=の兄、健一さん(69)。

 進展なかったら…

 一方で、制裁解除への不安の声も。松本京子さん=拉致当時(29)=の兄、孟(はじめ)さん(67)は「(京子さんに)会えるのではないかという楽しみができた」としながらも、「独自制裁は、被害者家族の『救出』への思いがこもったもの。一部にしても解除し、進展がなかったらどうするのか」と心配する。

 有本恵子さん=拉致当時(23)=の母、嘉代子さん(88)は「絶対に後に引かない交渉をしてほしい。8人のことを北朝鮮が明らかにしないなら、制裁解除を取りやめるという強い気持ちで挑んでもらいたい」と訴えた。(SANKEI EXPRESS

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