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【日米首脳会談】「安保は満願回答」 同盟復活を強調

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【日米首脳会談】「安保は満願回答」 同盟復活を強調

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日米首脳会談に臨む安倍晋三(しんぞう)首相(右から2人目)とバラク・オバマ米大統領(左から3人目)。きしんだ日米関係はリセットされたが、安倍政権が直面する課題は少なくない=2014年4月24日午前、東京都港区元赤坂の迎賓館(代表撮影)  4月24日の日米首脳会談後の記者会見で安倍晋三首相(59)は「日米同盟の復活」を宣言した。昨年(2013年)末の靖国神社参拝を機に、きしみが指摘されていた日米関係はリセットされた。背景にはウクライナへの関与を強めるロシアや海洋進出を狙う中国の存在があるが、「強固な日米同盟」を機能させるために安倍政権が直面する課題も少なくない。

 首脳会談の結果について外務省幹部が胸を張った。

 「安全保障は満額回答だ。こちらの要望は全部受け入れられた」

 確かに安保分野で首相がとった「実」は多かった。中国が周辺で威圧的行動を続ける尖閣諸島(沖縄県石垣市)について「(対日防衛義務を定めた)日米安保条約5条の適用対象」の言質をバラク・オバマ大統領(52)からとりつけた。ロシアと中国を念頭に「力による現状変更に反対」することでも一致し、集団的自衛権行使容認への取り組みに対しオバマ氏から支持を得た。

 対露で温度差

 両首脳が「日米同盟の強化」をアピールしたのは、冷戦後の国際秩序を力ずくで変えようとする中露の試みが、アジア太平洋地域の安定を揺るがしかねないとの強い懸念があるからだ。過去の日米首脳会談では、中国を明確に意識して牽制(けんせい)するような合意はなく、それだけ日米が危機感を共有していることを裏付けた。

 だが、ロシアへのスタンスで微妙な温度差があることは否定できない。クリミア併合を強行したロシアに対し米国は厳しい姿勢だが、日本は北方領土問題を抱え腰が引けている。外務省幹部は「今後、ウクライナ問題で米側の要求通り対ロシア制裁に踏み切れるか分からない」と漏らす。

 首脳会談では、核・ミサイル開発に突き進む北朝鮮問題での日米韓3カ国の連携を確認した。日本は3月末、北朝鮮との外務省局長級協議を再開し、拉致問題解決に向け交渉を続けている。だが、仮に北が4回目の核実験を強行すれば米韓との共闘を崩せず、日朝交渉はまた頓挫しそうだ。

 一方、集団的自衛権の行使容認についてオバマ氏から〝お墨付き〟を得たことを追い風に、安倍政権は憲法解釈見直しに向けた政府・与党内の調整を加速化させる。首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が5月13日にも提出する報告書を受け、5月中に行使容認を明記した日本の安保に関する「政府方針」を発表する段取りで、首相は憲法解釈の変更の閣議決定を目指す。

 普天間移設を急ぐ

 また、首脳会談で首相は、普天間飛行場(沖縄県宜野湾(ぎのわん)市)の代替施設建設に関し「強い意志を持って早期かつ着実に進める」とオバマ氏に伝えた。

 しかし、県内で移設反対の声は根強い。仲井真弘多(なかいま・ひろかず)県知事(74)は移設先の名護市辺野古沿岸部の埋め立てを昨年(2013年)末に承認したものの、1月の名護市長選で反対派市長が再選され、着工のめどは立たない。

 11月に予定されている知事選で移設反対派の候補が勝利すれば、埋め立てが白紙に戻される可能性がある。普天間飛行場の返還合意から約18年。これ以上計画が遅れると日米安保体制をきしませかねない。

 ≪オバマ大統領 中国との関係改善を促す≫

 オバマ大統領は4月24日の日米首脳会談を通じ、アジアの安全保障やウクライナ情勢などをめぐる国際社会での指導力をアピールした。さらに日本に対して中国との信頼関係構築を促すなど、国際協調を重視するオバマ外交の基本姿勢も改めて示したといえる。ただし環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)の日米協議で溝を埋めきれなかったことにはいらだちもみせた。アジア4カ国歴訪のスタートは、完璧な滑り出しとはいかなかったようだ。

 「米国の安全保障と繁栄はアジア太平洋地域の将来と切り離せない」。オバマ氏は会談後の共同記者会見で、アジア重視の姿勢を強調した。尖閣諸島が日米安全保障条約の適用対象だと明言したのも、政権のアジア重視政策が看板倒れになっているとの指摘に“反論”したかたちだ。

 またウクライナ情勢ではロシアへの追加経済制裁を改めて示唆した。国際社会全体でロシアに圧力をかけるべきだとするオバマ氏と、北方領土問題解決を見据えてロシア制裁に慎重な日本には温度差もある。

 しかしオバマ氏は今回、安倍首相から「(ロシアに対する)正しいメッセージを大統領のリーダーシップのもとで出していく」との言葉を引き出し、日米の結束を示すことに成功した。

 歴史問題をめぐる対立が続く日中関係については、オバマ氏は「事態がエスカレートし続けるのは正しくない。日本と中国は信頼醸成措置を講じるべきだ」と注文を付けた。

 オバマ氏がアジア重視外交の象徴と位置づけるTPPの日米協議では、農産品や自動車の日本市場への参入が関税や規制で制限されていると不満を表明。「これらの問題はいずれは解決せねばならない。そのタイミングは今だ」と、早期合意を促した。(SANKEI EXPRESS

 【日米首脳会談ポイント】

・環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の閣僚級協議を継続し、早期妥結を双方の当局に指示することで一致

・大統領は沖縄県・尖閣諸島が日米安保条約に基づく米側の防衛義務の対象になると明言

・首相は集団的自衛権行使容認の検討状況を説明し、大統領は歓迎

・北朝鮮問題に関し、日米韓3カ国の連携が重要と確認

・ウクライナ情勢について、力による現状変更は許されないと確認

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