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TPP日米閣僚折衝 膠着状態 焦点は牛と豚 最終攻防激しい火花

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TPP日米閣僚折衝 膠着状態 焦点は牛と豚 最終攻防激しい火花

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4月17日の協議を終えた後のマイケル・フロマン米通商代表(左)と甘利明(あまり・あきら)TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)担当相=2014年、米国・首都ワシントン(共同)  環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)交渉の日米協議で、甘利明(あまり・あきら)TPP担当相と米通商代表部(USTR)のフロマン代表は4月17日、ワシントン市内で会談したが、結論に至らず物別れに終わった。18日朝(日本時間18日夜)から協議を再開。24日に予定する日米首脳会談での大筋合意を目指して農産品関税の扱いや自動車分野で妥協点を探った。

 甘利氏は17日の会談後、記者団に対し、「膠着(こうちゃく)状態が続いている。主要なところは進展が見られない」と厳しい表情で語った。フロマン氏も記者団に対し「とても長い一日で、タフな交渉だった。落としどころを見つけられるかどうか努力を続ける」と語った。

 日本が「聖域」とする農産品の重要5分野のうち牛肉や豚肉、チーズなど一部乳製品の関税をめぐって日米の主張が対立しているもようだ。

 焦点の牛肉は、日本が現行38.5%の関税率をオーストラリアとの経済連携協定(EPA)で大筋合意した20%前後にする譲歩案を提示。これに対し、米国は1桁台前半まで引き下げるよう求めている。豚肉やチーズでも協議が難航しており、日米の距離感は「相当ある」(甘利氏)。5分野のうち残りのコメ、麦、砂糖は関税を維持する方向だ。

 自動車分野では日本の安全基準について、米国は「参入障壁」として米基準も認めるよう求めているが、日本側は拒否する姿勢だ。

 甘利氏は18日昼に帰国の途に就く予定。この日の協議でも物別れに終われば、首脳会談での大筋合意は困難になる公算が大きい。(柿内公輔/SANKEI EXPRESS

 ≪焦点は牛と豚 最終攻防激しい火花≫

 TPP交渉妥結の鍵を握る日米協議は最大のヤマ場を迎えた。何を守り、どこまで譲るのか。対立が続く牛・豚肉の関税問題は急展開するのか。大筋合意の宣言を目指す首脳会談まで1週間を切り、利害と威信をかけて膝詰めの最終攻防に臨んだ閣僚は激しい火花を散らした。

 4月16日夜の夕食会で始まった閣僚協議は、初めから険悪な雰囲気に包まれた。前週の東京での協議で一定の歩み寄りを見せたはずの米側から、「例外なき自由化」というTPPの原則に立ち戻るかのような方針が事前に伝えられていたためだ。

 「交渉を収斂させるために来たのであり、拡散させるために来たのではない」。甘利明(あまり・あきら)TPP担当相は、米国産牛肉の料理に手を付けず声を荒らげた。フロマン米通商代表は「受け止め方に誤解がある」といなしたが、24日に迫る日米首脳会談の成功を演出したい日本側に譲歩の余地があるだろうと、足元を見たのは間違いない。

 焦点は、牛・豚肉関税にほぼ絞られている。日本はオーストラリアと大筋合意したEPAにならい、38.5%の牛肉関税を半分程度に引き下げることで理解を得たい考えだ。豚肉は高価格帯に限って関税を撤廃し、それ以外は関税の引き下げで矛を収めてもらう戦略だ。

 牛肉関税をめぐる日本とオーストラリアの大筋合意に、米畜産団体は一斉に「強い懸念」を表明した。全米肉牛生産者・牛肉協会は「世界の消費者と生産者に不利益をもたらす」と批判する。対日輸出での競争上不利になるだけでなく、TPPでの自由化水準の低下を招く「悪い前例」になりかねないためだ。

 ただ業界内では足並みの乱れもうかがえる。各団体は日米協議での「前向きな成果」を期待する書簡を大統領に送ったが、これまで対日要求の旗振り役だった全米豚肉生産者協議会は加わらなかった。「関税ゼロしか受け入れられない」(幹部)と強硬な協議会に対し、他の団体は大幅引き下げなら容認する姿勢をにじませており、路線の違いが表面化してきた。

 「数字にこだわることも重要だが、TPPには数字を超えた意味がある」。安倍晋三首相は17日の講演で、日米同盟を強化するためにも協議を妥結させるべきだと訴えた。

 日本が米大統領を国賓として迎えるのは18年ぶりだ。首相に近い閣僚の一人は「『安全保障は仲良くしますが、TPPでは距離が離れていっています』なんてできるわけがない」と話す。会談の成否をTPPが左右するのは明白だ。

 深夜まで及んだ17日の協議を終えた甘利氏は「相当疲れている」とつぶやきながら記者団の前に登場。日米首脳会談でどう成果を示すのかと問われ「良い案があれば教えてほしい」とぼやいた。(共同/SANKEI EXPRESS

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